That's!イズミコ

『That's!イズミコ』

作品概要

漫画家・大野安之による『That's!イズミコ』は、1983年から1987年にかけて『コミック劇画村塾』（スタジオシップ刊）にて連載されたSFコメディ作品です。作者の出世作として知られ、全6巻の単行本が刊行されました。

物語の中心となるのは、測定限界を超えるIQを持ち、極楽院家に伝わる驚異的なオーバーテクノロジーを自在に操る主人公、極楽院和泉子（通称イズミコ）です。彼女が次々と生み出す突飛なメカニックや発明品が巻き起こす騒動と、それに毎回のように巻き込まれてしまうごく普通の女子大生、北上優子（通称ゆーこ）との交流がコミカルに描かれます。

しかし、本作にはもう一つの側面があります。それは、イズミコが幼い頃に作り出した自身の分身である極楽院影見子（通称カガミコ）との対立を軸とする、シリアスでダークなドラマです。原子レベルでイズミコと同一の存在でありながら、自身の存在を「鏡」として見られることを嫌悪し、イズミコに深い憎しみを抱くカガミコが登場するエピソードでは、物語のトーンは一変します。

作風も、通常はポップでキャラクターがデフォルメされた絵柄が多用されるのに対し、特にカガミコが関わる場面では劇画タッチで描かれることがあり、作品に多様な表情を与えています。

2003年には、辰巳出版の『ペンギンクラブ』にて続編となる『That's!イズミコ おかわり』が連載され、新たな登場人物と共にイズミコの活躍が描かれました。

登場人物

個性豊かなキャラクターたちが、作品世界を彩っています。

極楽院 和泉子（イズミコ）: 主人公。三大ファミリーの一つ、極楽院家の一人娘で、「なんたら大学」の聴講生。桁外れの知能と技術で様々なメカを生み出し、騒動の中心となります。極楽院家は「時空を超越する異空間」の力を利用して世界を支配しており、イズミコもその一端を担っています。
北上 優子／裕湖（ゆーこ）: 本作のヒロイン。「なんたら大学」の学生で、なぜかイズミコの奇行に巻き込まれてばかり。物語の途中で名前の表記が変わります。年下であるサガの彼氏です。
嵯峨（サガ）: イズミコの弟。まだ小学生ながら、母親譲りの超人的な身体能力や時空を超える力を持つ少年。年上であるゆーこと恋人関係にあります。
極楽院 影見子（カガミコ）: イズミコが作り出したもう一人の自分。イズミコと瓜二つの能力を持ちますが、鏡像としての自分を否定し、創造主であるイズミコを強く憎んでいます。
松任谷教授: 「なんたら大学」の実践不可知理論物理学研究室の教授。飄々として一見無頓着に見えますが、コンピューター分野に精通しており、イズミコと共に超高性能コンピューター「けんざぶろー」などを開発します。

この他にも、三大ファミリーの関係者、極楽院家の使用人、異世界や異次元から訪れる不思議な存在など、多種多様なキャラクターが登場し、物語を賑わせます。

登場メカニック

イズミコの手によって生み出される、奇想天外なメカニックも本作の大きな魅力です。

GDMS（重力なんかでーっきれーだ無視しちゃうもんシステム）: 物体に意思を与え、重力を無視させる装置。
バグアップル: リンゴの形をしたメカ。バグ（欠陥）によって本物のリンゴを産み出します。
ケンザブロー: イズミコが開発した高性能コンピュータシステム。シミュレートした内容が現実世界に影響を与える恐るべき能力を持ちます。
強化服（パワードスーツ）: ウェディングドレス型やすーぱーひーろーぷりてぃーずシリーズなど、様々なタイプが登場し、イズミコやゆーこが着用して活躍（？）します。
テルマサ号: 松任谷教授が建造した二足歩行するボンネットバス。

これらのメカは、ストーリーにおける騒動の元となることが多く、作品のSFコメディ要素を強く押し出しています。

続編『That's!イズミコ おかわり』

続編では、イズミコとカガミコが融合した新たな主人公が登場。ホームレスでありながらマッドサイエンティストぶりを発揮するイズミコと、天界から落ちた音符から生まれた使用人「こんちぇると」、カガミコの娘である悪の帝王見習い「へる・くりす」など、さらに個性的なキャラクターたちが織りなす物語が展開しました。

単行本と現在の入手状況

単行本は長く絶版となっていましたが、2011年からは「マンガ図書館Z」にて全巻が無料公開されており、手軽に読むことができるようになりました。また、2013年には復刊ドットコムより作者セレクトのベスト版が刊行されています。さらに、2021年からは電子書籍の新装版、2022年には『イズミコ』全6巻と『おかわり』全1巻を収録した合本版も配信されており、様々な形で作品を楽しむことが可能です。

『That's!イズミコ』は、予測不能なSFコメディと、時に心をえぐるようなシリアスドラマが融合した、独特の世界観を持つ作品です。強烈な個性を放つキャラクターたちと、常識を超えたメカニックの数々が織りなす物語は、今なお多くの読者に支持されています。

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