Times New Roman

タイムズ・ニュー・ローマン（Times New Roman）は、1932年にイギリスの有力紙タイムズによって、新聞用書体として開発されたラテン文字のセリフ体フォントです。新聞という大量の情報を扱う媒体において、可読性を高め、紙面を効率的に利用するために設計されました。その洗練されたデザインは、瞬く間に世界中で広く認知され、印刷物だけでなく、デジタル環境においても標準的なフォントの一つとして定着しました。

タイムズ・ニュー・ローマンの特徴

タイムズ・ニュー・ローマンは、セリフ（文字の端にある飾り）を持つ書体であり、特に文章の長いテキストを読む際に、視線を滑らかに誘導する効果があります。そのため、書籍や雑誌などの印刷物によく利用されます。また、その普遍的なデザインは、フォーマルな印象を与えるため、ビジネス文書や学術論文など、公式な場面でも多用されます。

Timesフォントとの関係

多くのパーソナルコンピュータには、タイムズ・ニュー・ローマンがプリインストールされています。ただし、Mac OSにおいては、ライノタイプ社がライセンスを持つ「Times」というフォントがインストールされています。このTimesフォントとタイムズ・ニュー・ローマンは、どちらも文字幅が同じであるため、組版の互換性が保たれています。つまり、同じ文章を異なるフォントで表示しても、行の長さや段落の構成が崩れることはありません。ただし、細かいデザインにはいくつかの違いが見られます。例えば、大文字の「S」のセリフが、Timesでは斜めになっているのに対し、タイムズ・ニュー・ローマンでは水平になっています。また、「5」の数字にはTimesにはセリフが付いていますが、タイムズ・ニュー・ローマンにはありません。イタリック体の「z」も、Timesではカールしているのに対して、タイムズ・ニュー・ローマンでは直線的なデザインとなっています。

日本語DTPにおける利用

日本語DTP（デスクトップパブリッシング）の分野では、モリサワの明朝体フォントである「リュウミン」が標準的に用いられています。特に、リュウミンのライトウェイトである「L-KL」のPostScriptフォント製品では、欧文部分にTimesフォントが採用されていました。これは、日本語の明朝体と相性が良い欧文書体としてTimesが選ばれたためです。しかし、OpenTypeフォントではこの仕様が改められ、リュウミンファミリーのデザインに統一されました。

タイムズ・ニュー・ローマンの代替フォント

タイムズ・ニュー・ローマンは、商用フォントとしてライセンスが必要な場合があります。そのため、代替となるフリーフォントも開発されています。Linux Libertineは、タイムズ・ニュー・ローマンとデザイン的に似せて作られたフリーフォントで、オープンソースソフトウェアにバンドルされることもあります。Liberation Serifは、デザインよりも文字幅の互換性を重視したフリーフォントで、異なるフォントで作成された文書を修正する際に、レイアウトを崩さないように利用できます。

まとめ

タイムズ・ニュー・ローマンは、その歴史的な背景と洗練されたデザインから、今日まで広く利用されているフォントです。印刷物だけでなく、デジタル環境においても、標準的なフォントとして認識されています。可読性の高さと普遍的なデザインは、様々な場面で活用でき、今後も長く利用され続けるでしょう。

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