Tu-91 (航空機)

Tu-91艦上攻撃機の概要

Tu-91（ロシア語:Ту-91）は、ソ連のツポレフ設計局が航空母艦での運用を目指して開発した艦上攻撃機です。この機体は、ターボプロップエンジンを搭載した単発機で、NATOコードネーム「Boot」で識別されています。1953年にスターリンが亡くなった後、航空母艦計画は白紙化され、本機は陸上機として再設計されましたが、最終的には量産に至ることはありませんでした。

開発背景

第二次世界大戦後、アメリカ海軍との競争が激化する中で、スターリンはソ連海軍の強化を進めていました。新たな航空母艦とそれに配備する艦上攻撃機が求められ、これに応える形で1953年4月29日にTu-91の開発が始まりました。艦上攻撃機としての要件を満たすために設計されたこの機体は、爆弾や魚雷の搭載能力を有し、近接支援や地上攻撃に適した性能を持っていました。

機体構造と性能

Tu-91は低翼の直線翼機で、イソトフ TV2ターボプロップエンジンを中心に装備されています。このエンジンは胴体中央に配置され、長いシャフトを介して機首の二重反転プロペラを駆動しています。コックピットは防弾装甲が施された並列複座型で、パイロットは後部に配置された銃塔のNR-23二連装機関砲を遠隔操作することが可能です。

また、爆撃方式には急降下爆撃と水平爆撃があり、副操縦席には爆撃照準器も搭載されています。最大1,500 kgの爆弾やロケット弾を胴体下面や翼下に装備でき、さらに翼根元にはNR-23機関砲が固定武装として搭載されています。艦載機としての特性を持つため、翼の折り畳み機構やアレスティングフックも備えています。

テストと計画中止

Tu-91のエンジンと駆動部分の試験には、既存のTu-4をテストヘッドとして使用しました。Tu-4の右翼内側のエンジン部分をTu-91の胴体に改造し、試験を実施したこの機体は「Tu-4LL」と呼ばれました。この特別改造機による試験は、Tu-91の基本性能を確認するための重要なものでした。

1953年のスターリンの死後、航空母艦計画は新しい指導者ニキータ・フルシチョフによって中止され、経験豊富なツポレフ設計局は、Tu-91を陸上機へと変更しました。開発は順調に進行し、1955年5月17日には試作機の初飛行に成功しました。試作機は優れた性能を示しましたが、フルシチョフが試験機を視察した際、直線翼のプロペラ機が時代遅れであると批判され、超音速機の開発や核戦力の強化が優先されたため、Tu-91は量産に至ることなく計画は中止となりました。

機体仕様

Tu-91の仕様は以下の通りです：

• - 翼幅: 16.40 m
• - 全長: 17.70 m
• - 全高: 5.06 m
• - 翼面積: 47.5 m²
• - 空虚重量: 8,000 kg
• - 最大離陸重量: 14,400 kg
• - 発動機: イソトフ TV2M ターボプロップエンジン ×1
• - 出力: 7,650 軸馬力
• - 最高速度: 800 km/h
• - 巡航速度: 250 - 300 km/h
• - 実用航続距離: 2,350 km
• - 実用飛行上限高度: 11,000 m
• - 乗員: 2 名
• - 武装:

- 固定機銃: NR-23 23 mm機関砲 ×2（各100発）
- 後部旋回機銃: NR-23 23 mm機関砲 ×2
- 爆弾搭載量: 最大1,500 kg（爆弾、ロケット弾、ロケット魚雷、爆雷）

このように、Tu-91はその特異な開発経緯と性能により、冷戦時代の航空機の歴史において独自の位置を占めているのです。

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