U612 (潜水艦)

U612：第二次世界大戦下のドイツ潜水艦

U612は、第二次世界大戦中にナチス・ドイツ海軍で運用されたVIIC型潜水艦です。1942年3月に就役後、同型艦との衝突事故で一時沈没しましたが、修理を経て再就役し、終戦まで訓練部隊で使用されました。

艦歴

U612は1940年8月15日に発注され、1941年4月21日にハンブルクのブローム・ウント・フォス造船所で起工、1942年1月9日に進水し、同年3月5日に就役しました。初代艦長はポール・ジークマン中尉が務めました。

就役後には、Uボートを題材とした著書『鉄の棺』で知られるヘルベルト・ヴェルナーが副艦長として乗艦しました。U612はバルト海で最終的な調整と試験航海を行い、ケーニヒスベルクを拠点とする第5潜水隊群に配属されました。

衝突事故と沈没

1942年8月6日、訓練中のU612はダンツィヒ沖で同型艦のU444と衝突しました。ヴェルナーの著書によれば、両艦は衝突直前まで互いの存在に気づいておらず、事故後もU444の艦長は衝突を認識していなかったとのことです。ヴェルナーは、急速に沈むU612からの脱出と、U444を含む2隻のUボートによる救助活動についても記述しています。この事故でU612の乗員2名が犠牲となりました。

引き上げと修理、再就役

艦長のジークマンと乗組員には、U612を引き上げて復帰させる任務が与えられました。8月中に船体は引き上げられましたが、浸水による損傷が大きすぎたため、ダンツィヒの造船所に送られました。ジークマンらは別の潜水艦U230に転属となりました。

U612の修理は翌1943年に完了し、同年5月31日に再就役しました。しかし、前線での運用には適さないと判断され、以降はバルト海での訓練任務に限定して使用されました。再就役後の艦長はT.ペーターゼ中尉が務め、訓練部隊である第24潜水隊群に所属しました。1944年2月には艦長がH.P.ディック中尉に交代し、所属も第31潜水隊群へと変更されました。

自沈

1945年5月2日、U612はヴァーネミュンデでソ連軍に捕捉され、鹵獲を防ぐために自沈しました。

U612は、その短い生涯の中で、事故による沈没と再浮上、そして訓練任務への転換という数奇な運命を辿った潜水艦でした。

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