UNIX Systems Laboratories

UNIX Systems Laboratories（USL）は、1989年にベル研究所の下部組織として設立されました。その主な目的は、UNIXオペレーティングシステムの開発と、それに関連するライセンス業務を管理することでした。その後、ベル研究所の親会社であるAT&Tの完全子会社となり、UNIXの商業的展開における重要な役割を担いました。

1992年、USLは大きな転換期を迎えます。ノベル社がUSLとその保有するUNIX関連の資産（著作権、商標、ライセンスを含む）を買収したのです。当時USLはSystem V Release 4（SVR4）を開発しており、この買収によってSystem V系UNIXの開発はノベル社へと引き継がれました。ノベルによるUNIXの商業化は、その後のUNIX市場に大きな影響を与えることになります。

さらにその後、SCOグループがUNIXの資産をノベルから買い取り、System V Release 5（SVR5）を開発しました。しかし、SCOはカリフォルニア州に本拠を置いていたのに対し、USLはニュージャージー州に拠点を置いていたため、USLの物理的な資産や研究者たちはヒューレット・パッカード（HP）社によって買収されました。これにより、UNIX開発に関わる組織が分散し、複雑な状況が生じました。

USLは、1992年にBSD（Berkeley Software Distribution）に対しても訴訟を起こしました。この訴訟は、USLがBSDのコードに自社の知的財産が含まれていると主張したことが発端です。USLは訴訟の過程で、4.3BSD Net/2の公開停止を求めました。この訴訟は、BSDコミュニティに大きな衝撃を与え、オープンソースソフトウェアのあり方について議論を呼び起こしました。

しかし、裁判所はUSLの主張する知的財産権に対して疑念を提示し、1993年にUSLとBSDの間で示談が成立しました。訴訟自体は決着したものの、この事件はBSDの商用利用に対する企業の抵抗感を増大させる結果となり、結果的にLinuxの台頭を後押ししたと言われています。BSDライセンスの自由度の高さは、商用利用を検討する企業にとってはリスク要因とみなされるようになり、より明確なライセンスを持つLinuxへと移行する企業が増加しました。

このように、UNIX Systems Laboratoriesは、その設立から、ノベルによる買収、BSDに対する訴訟などを通じて、UNIX市場の歴史において重要な役割を果たしました。USLの活動は、UNIXの商業化、オープンソースソフトウェアの発展、そしてLinuxの台頭といった、その後のコンピューティングの進化に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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