VC-25 (航空機)

VC-25：アメリカ大統領専用機

VC-25は、ボーイング747-200Bを基に設計変更を行い、新しく製造されたアメリカ合衆国大統領専用機です。正式な愛称はありませんが、「空飛ぶホワイトハウス」や「エアフォースワン」という通称で広く知られています。

機体の歴史と背景

VC-25は、旧型の大統領専用機であるVC-137（改造ボーイング707-320C）の後継機として、1986年に開発が始まりました。1987年に初飛行を果たしましたが、核攻撃による電磁パルス（EMP）対策のために納期が遅れ、最終的に1990年にアメリカ空軍に引き渡されました。最初にこの機を使用した大統領はジョージ・H・W・ブッシュです。

本機はメリーランド州に所在するアンドルーズ空軍基地に駐留し、アメリカ空軍第89空輸航空団によって運用されています。乗員は全員アメリカ空軍の軍人で、特に訓練においては747の運用実績があるアトラス航空が担当しています。

機体の特徴と構造

VC-25は2機存在し、各機には82-8000（テールナンバー28000）と92-9000（テールナンバー29000）の記号があります。82-8000は主に大統領が利用し、92-9000は予備機や副大統領、閣僚の利用に充てられます。これは、例えば1機にトラブルがあった場合に国家運営が影響を受けるのを防ぐための対策です。

「エアフォースワン」という名は、大統領が米空軍機に乗った際のコールサインであり、副大統領の場合は「エアフォースツー」となります。機体が大統領専用でないフェリー移動時には、テールナンバーを用いてそれぞれ「SAM28000」と「SAM29000」という呼称が使われます。

内部設備

VC-25の内部は旅客機としての標準を遥かに超えた特異な設計が施されています。基本的には747-200Bの飛行性能を継承しつつ、内部は多機能に仕上がっており、定員は70人程度に制限されています。これにより、会議室や大統領専務室、医務室などが設けられ、必要に応じて代表的な公務や緊急対応も行えます。

たとえば、会議室は防音・密閉が可能で、いざという時には大統領の手術室として機能します。また、医務室には必要な機器や医師が常駐し、尿検査や血液検査が行えるように設備されています。さらに、通信室は暗号化された回線を持っており、重要な情報通信が可能です。

改造の詳細

VC-25の改造は、747-400の進化と同時期に行われたため、高度計などの一部には最新のグラスコックピットが取り入れられています。機体外部は、マリンブルー、スカイブルー、ホワイトのカラーリングが施され、「UNITED STATES OF AMERICA」の文字が入っています。

内装は非常に厳重に管理されており、全ての食器類、調理器具には特定の装飾が施されています。食事はすべて出発前に調理され、安全性を確保するために毒物混入防止が徹底されています。特に食材は事前に一般の店舗で購入され、シェフ自身が注意を払って調達します。

整備と運用の厳格さ

VC-25は、非常に高い整備頻度が必要です。運航の度に整備が行われ、特にエンジンや重要機器の点検が徹底されます。万が一のトラブルに備えて、機内には予備部品やスペアタイヤも搭載されています。

食事に関しても、以前に提供された内容や好みに基づいて調整され、搭載前には手間を惜しまずに準備がされています。出発前に大まかな下ごしらえが行われ、機内での最終的な調理がなされるため、温かい状態での提供が可能です。

このようにVC-25は、アメリカ合衆国大統領にとって、ただの移動手段であるだけでなく、国家の代表としての機能を持った特別な航空機であることが分かります。

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