アトラス航空

アトラス航空について

アトラス航空（Atlas Air）は、アメリカ合衆国ニューヨーク州に本社を置く貨物航空会社です。1992年4月に設立され、親会社のアトラスエア・ワールドワイド・ホールディングスはNASDAQに上場しています。社名は、ギリシャ神話の神アトラースに由来します。

歴史と運用

アトラス航空は、ボーイング747型機を大量に導入し、貨物機として運用していることで知られています。初期は旅客機として使用されていた747を貨物仕様に転換していましたが、2000年代からは新造の747-400F型機も導入しました。現在では、民間輸送だけでなく、アメリカ軍の輸送も担っています。2010年代には、他社から747-400F型機を導入し、初期の747型機を退役させています。

日本へも定期的に乗り入れており、成田国際空港、中部国際空港、関西国際空港、横田基地、嘉手納基地などに飛来しています。近年では、鹿児島や北九州にも姿を見せるようになりました。特に、中部国際空港には、愛知県で製造されたボーイング787型機の主翼部品を運ぶために、ボーイング社が保有する747-400LCF（ドリームリフター）を運航しています。

パートナーシップ

アトラス航空は、多数の企業とパートナーシップを結んでいるのが特徴です。キューネ・アンド・ナーゲル、フレックスポート、エーペックス・ロジスティクス、アリババグループなどの貨物輸送業者から、カンタス航空や日本貨物航空といった航空会社まで、幅広い企業と連携しています。一部の機体にはパートナー企業のロゴが入っており、特定の路線や便で運用されています。ただし、機体整備の際には、通常塗装の機材が使用されることもあります。

また、Amazon.comの専用輸送機「Amazon One」（767-300）の運航も受託しています。しかし、2019年には、この「Amazon One」の機体が墜落する事故も発生しました（詳細は後述）。

旅客チャーターへの参入

これまで貨物輸送を専門としてきたアトラス航空ですが、近年では軍事・国際旅客チャーター便の運航も開始しています。旅客便では、ボーイング747-400型機と767-300ER型機が使用されています。これらの機体には、かつて日本航空や全日本空輸で使用されていた機体も含まれています。また、ヴァージンアトランティック航空から移籍してきた機体も存在します。767-300ER型機は、アシアナ航空やLAN航空（現LATAM航空）で使用されていた機体で、アメリカ国内のローカル空港にも対応可能です。今後は、必要に応じて757、767、777クラスの機材も導入予定です。

保有機材

アトラスグループ全体の保有機材数は109機です。アトラス航空が運用する機材は、以下の通りです（2022年現在）。

ボーイング737-800BCF：8機（全機アマゾン・エアからのリース）
ボーイング747-400F：35機（うち4機がBDSF型、4機が移籍機。ポーラーエアカーゴから5機、シルクウェイウエスト航空から2機が移籍）
ボーイング747-400LCF（ドリームリフター）：4機（全機ボーイングからの受託）
ボーイング747-400：6機（1機はストア）
ボーイング747-8F：12機
ボーイング767-300/300ER：6機（2機はストア）
ボーイング767-300F/300BCF：20機（18機はアマゾン・エアで運用）
ボーイング777F：2機（1機はMSC Air Cargo塗装）

アトラス航空は、ボーイング747-8F型機を12機発注しましたが、初期製造分の3機を取り消し、9機に変更しました。その後、新型コロナウイルスの影響による貨物需要の高まりから、さらに4機を追加発注しました。ボーイング社は2022年に747型機の製造を終了しており、アトラス航空が受領した最後の4機が747シリーズの最終生産機となりました。そして、2023年1月31日に最終号機であるN863GTが引き渡され、747シリーズの製造は全て終了しました。

アトラス航空の乗務員訓練所は、フロリダ州マイアミにあります。ここでは、自社パイロットの訓練だけでなく、アメリカ空軍の政府専用機パイロットの訓練も行われており、その高い信頼性が伺えます。アトラス航空が発注したボーイング機には、顧客番号（カスタマーコード）7Uが付与されており、747-47UF, 747-87UFといった形式名で呼ばれます。かつては、ボーイング747型機の初期型（クラシック）である100、200、300型機を運用していました。これらの機体の中には、全日本空輸、タイ国際航空、アリタリア航空、ヴァリグ・ブラジル航空などで使用されていた機体も含まれていました。

事故

2019年2月23日、アトラス航空3591便（ボーイング767-300F型機、Amazon専用機）が、マイアミ国際空港からヒューストン国際空港へ向かう途中に、テキサス州で墜落しました。この事故で乗員3名全員が死亡しました。原因は、着陸復航モードの誤作動に対する副操縦士の不適切な対応とされています。

まとめ

アトラス航空は、世界を股にかける貨物輸送の重要な担い手であり、ボーイング747型機の主要なオペレーターです。近年では旅客チャーターにも参入し、事業の幅を広げています。数多くの企業との連携を通じて、グローバルな物流を支える重要な存在です。

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