VK4502(P)

超重戦車VK4502(P)：ポルシェ社の野望と挫折

第二次世界大戦中、ドイツ軍はより強力な戦車の開発を常に求めていました。その中で、ポルシェ社はVK4501(P)に続く、超重戦車VK4502(P)の開発計画に着手しました。VK4502(P)は、複数の設計案が存在したことで知られています。特に、タイプ180とタイプ181は、駆動方式やエンジン、砲塔配置に大きな違いが見られました。

タイプ180：改良された電気駆動方式

タイプ180は、VK4501(P)をベースに設計されましたが、足回りや装甲などが強化されています。車体前面装甲は、傾斜した一枚板構造となり、防御力を向上させていました。駆動方式は、VK4501(P)と同様に、ポルシェ・タイプ101/3ガソリンエンジン2基と電動機を組み合わせた電気駆動方式を採用。計画では、ポルシェ・タイプ101/4エンジンへの換装も検討されました。推定重量は64トンに達し、主砲には強力な7.1cm8.8cm戦車砲を搭載、約68発の砲弾を備えていました。砲弾の配置は、砲塔に16発、車体に42発、車体床下に10発と、戦況に応じた柔軟な運用が考慮されていました。副武装として、MG34機銃2挺を装備する計画でした。

タイプ181：革新的な流体駆動方式

対照的に、タイプ181は、革新的な流体駆動機構を採用する計画でした。VK4501(P)のシャーシを流用し、フォイト社製の油圧式NITA主変速機を搭載。この変速機は2基の油圧式トルクコンバーターを備え、従来の機械式変速機に劣る効率を補うとともに、電気式変速機と同等の性能が期待されていました。しかし、開発は途中で中止されています。

エンジンは複数案が存在しました。一次案は、V型10気筒335馬力の101/4エンジン2基。二次案では、ポルシェ・ドイツ・ディーゼルエンジン2基。三次案では、出力向上型のポルシェ・ディーゼルエンジン1基を搭載する計画でした。このポルシェ・ドイツ・ディーゼルエンジンは、X型16気筒、排気量19.6リットル、370馬力を発揮する強力なエンジンでした。三次案では、さらに出力を向上させた排気量37リットル、700馬力のエンジンが試作されました。

生産と実戦配備

残念ながら、VK4502(P)は、設計段階にとどまり、量産されることはありませんでした。しかし、クルップ社の1943年2月17日付のレポートには、ニーベルンゲンベルクで3台のVK4502(P)試作車が完成したと記載されています。この車両は電気駆動方式で新型サスペンションを装備していました。量産計画では、油圧駆動方式への変更、新型サスペンションの継続採用、900馬力の空冷ディーゼルエンジン搭載、装甲厚増加が予定されていました。

続く1944年4月25日付のクルップ社のレポートでは、ポルシェタイガー試作型の砲塔3基のうち1基が完成し、残り2基は部品が揃っているものの、組み立て用の工具不足で放置されていると報告されています。さらに1945年には、キュンマンスドルフ兵器実験場において、8.8cm L/70砲を搭載したポルシェ砲塔付きティーガー戦車が、マーダーIIIやヘッツアーと共にT-34と交戦した記録が残っています。これは、試作車が実戦に投入された貴重な事例です。

結語

VK4502(P)は、製造には至らなかったものの、ドイツ戦車開発史において重要な位置を占める試作戦車です。革新的な技術が導入された一方で、戦争末期の混乱や資源不足の中で、完成に至らなかったことは、歴史の大きな皮肉と言えるでしょう。その技術的挑戦と、残されたわずかな実戦記録は、軍事史研究において、今もなお重要な研究対象となっています。

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