VVA-14 (航空機)

ベリエフ VVA-14

ベリエフ VVA-14は、旧ソビエト連邦において1970年代に研究・開発が進められた、垂直離着陸（VTOL）能力を持つ水陸両用航空機です。この機体は、当時アメリカ海軍が運用を開始した潜水艦発射弾道ミサイル「ポラリス」に対抗するため、潜水艦を迅速に探知・撃破する手段として構想されました。

主任設計者ロベルト・バルティーニによって考案されたVVA-14は、水上からの離着水・発進を可能とし、高い巡航速度での長距離飛行を目指しました。さらに、リフトエンジンによる滑走路不要な垂直離着陸能力や、海面上を効率よく高速で滑空するための地面効果（エクラノプラン効果）を利用する能力も併せ持つという、非常に意欲的な設計がなされていました。

開発計画

バルティーニは、ベリエフ設計局と協力し、VVA-14の試作機開発を3段階で進める計画を立てました。

1. VVA-14M1: 流体力学および基本的な技術を検証するためのテストベッドとして位置づけられました。初期段階では機体中央部の主翼端に硬式のポンツーン（浮舟）が装備されていましたが、後に試験中に空気圧で膨らませて使用する軟式のポンツーンに変更されました。
2. VVA-14M2: M1から発展した形態で、翼下の空洞に燃焼流を排気して揚力を補助する2基の始動用エンジンを追加する計画でした。また、垂直離着陸を実現するための多数のリフトエンジンの搭載や、近代的なフライ・バイ・ワイヤ飛行制御システムの導入も予定されていました。
3. VVA-14M3: 計画最終段階として、完全武装した実戦仕様のVTOL機となる構想でした。コンピュータ化された対潜水艦戦闘（ASW）システム「ブレベストニク」に加え、磁気探知機（MAD）「Bor-1」などの作戦用器材を装備する予定でした。

開発の経緯と終焉

VVA-14の開発に先立ち、地面効果を利用する小型試験機ベリエフ Be-1を含む広範な研究が行われました。最初のVVA-14試作機は1972年に完成し、同年9月4日には一般的な滑走路からの初飛行に成功しました。

1974年には膨張式ポンツーンが導入されましたが、これは開発チームにとって多くの問題を引き起こしました。しかし、その後も開発は続けられ、浮揚試験や水上滑走試験を経て、1975年6月11日には水陸両用機としての飛行試験を開始する段階に達しました。

膨張式ポンツーンは後に再び硬式タイプに換装され、この改修と並行して胴体部分の延長や始動用エンジンの追加が行われ、機体は14M1Pの呼称を与えられました。しかし、開発計画の根幹である垂直離着陸能力を実現するために必要だった、合計12基のリフトエンジン（RD-36-35PR）が、設計局側の供給遅延によりついに調達されませんでした。これにより、VTOL試験を行うことが不可能となりました。

さらに、1974年のロベルト・バルティーニの死去も計画に大きな影響を与え、開発は大幅に遅延します。結局、リフトエンジンの未調達によるVTOL能力試験の断念や設計者の喪失が重なり、VVA-14計画は実質的に幕を閉じました。試作機は合計107回の飛行を行い、総飛行時間は103時間にとどまりました。

唯一製造されたVVA-14試作機（機体番号19172）は、1987年にロシアのモニノにある空軍中央博物館に引き取られ、退役しました。2021年現在、この機体は主翼が取り外された状態で博物館の屋外に展示されています。展示機には「10687」というナンバーや「アエロフロート」の表記が見られます。

諸元 (VVA-14M1)

乗員: 3名
全長: 25.97 m
全幅: 30 m
全高: 6.79 m
翼面積: 217.79 m²
空虚重量: 23,296 kg
最大離陸重量: 52,000 kg
機関:
巡航用: D-30M ターボファンエンジン × 2基 (各推力 67 kN)
VTOL用 (未装着): RD-36-35PR リフトターボファンエンジン × 12基 (各推力 43 kN)
性能:
最高速度: 760 km/h
巡航速度: 640 km/h
航続距離: 2,450 km
* 実用上昇限度: 8,000 - 10,000 m

関連情報

日本のビデオゲーム『メタルギアソリッド3』に本機が登場しています。

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