VZ-2 (航空機)

VZ-2の概要と試験歴

VZ-2はアメリカ合衆国で開発された垂直離着陸実験機で、アメリカ航空宇宙局およびアメリカ海軍と連携しながらアメリカ陸軍が発注したものです。この機体は、製造をバートル社が担当し、1機のみが作られました。VZ-2の最大の特徴は、ティルトウイングという革新的な技術を採用している点です。

機体構造

VZ-2は、実験機として基礎的な設計がなされ、外板が施されていないフレーム構造が施されるなど、簡素な作りとなっています。動力源として、中央上部に設置されたターボシャフトエンジンが1基搭載されています。このエンジンは駆動軸を通じて、両翼に取り付けられた主翼それぞれに1基ずつ、合計2基のローターを動かします。この機体の主翼には、大型のローターが取り付けられており、水平飛行時には0度から上向きの90度まで、迎え角を可変に調整できる仕組みを整えています。

また、尾翼はT字型にデザインされており、付随するダクテッドファンが垂直および水平尾翼に埋め込まれています。このダクテッドファンは、低速飛行やホバリング時の操縦に寄与しています。

開発と試験

VZ-2の開発は1956年4月15日にアメリカ陸軍によって発注され、初飛行は1957年8月13日に成功を収めました。この際、垂直離陸から水平飛行の転換技術も追求され、1958年7月23日にそれが実現しています。さらに陸海軍は1960年まで試験を実施し、その後はNASAが1965年まで試験を続けました。

この機体は450回以上の飛行試験を行い、総飛行時間は50時間を超えています。その中で273回の転換飛行試験が行われ、うち43回が完全な転換飛行として成功しました。これらの試験を通じて得られたデータや技術が、以降の航空機開発に多大な影響を与えました。退役後のVZ-2は、国立航空宇宙博物館にて保管されています。

比較対象

VZ-2の開発時期、技術内容はアメリカ空軍が同時期に実施したティルトウイングの実験機、X-18と比較されます。X-18は別のアプローチを取っており、同じく新しい航空技術の可能性を探る試みでした。これらの実験機は、将来的な垂直離着陸機の開発の礎となる重要な存在だったといえるでしょう。

要目

VZ-2の特性について、いくつかの要目を示します。全長は8.05m、全幅7.59m、全高4.57mで、エンジンはライカミングのYT53-L-1ターボシャフトエンジンを1基搭載し、出力は700馬力です。ローターの直径は2.90mで、最大速度は340km/hに達します。乗員数は1名で運用されます。

VZ-2は、航空機の新たな可能性を切り開く重要なマイルストーンとして、航空史に名を刻む存在となっています。

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