VZ-3 (航空機)

ライアン VZ-3 バーティプレーン

ライアン VZ-3 バーティプレーン（Ryan VZ-3 Vertiplane）は、アメリカ合衆国によって開発された垂直離着陸実験機であり、主に垂直または超短距離離着陸の性能を検証するために設計されました。この機体はアメリカ航空宇宙局（NASA）やアメリカ海軍の協力を得て、アメリカ陸軍によって発注され、ライアン・エアロノーティカル社によって製造されました。結局、製造されたのは1機のみです。

設計の裏側

ライアン VZ-3の設計は1956年6月に始まり、1957年には完成を見ました。この機体の特長は、推力偏向方式による大面積のフラップを使用している点です。この技術を活用し、短距離の離着陸ができる特性を研究することが目的とされていました。

機体構造

機体のエンジンには、胴体内に配置された1基のターボシャフトエンジンが搭載されており、左右の主翼にそれぞれ1基ずつのプロペラが接続されています。このプロペラは直径2.79メートルの3翅の大型もので、主翼下に位置し、通常の航空機と同様に回転面は機体前方を向いています。胴体尾部からのエンジン排気を用いてホバー飛行の際の飛行制御が行われます。

主翼は高翼配置で、幅が比較的短いため、飛行中の安定性を確保します。また、主翼後縁には深い角度で操作可能な二重隙間フラップを装備しており、プロペラからの後流を下方に変更する役割を果たしています。これにより、飛行時の揚力を向上させることが可能です。さらに、主翼端にはフラップのガイドとなる垂直整流板も設置されています。これらのフラップは水平飛行時には収納され、必要に応じて展開されます。着陸脚は固定式であり、T字型の尾翼が特徴的です。

試験飛行と成果

1958年から曳航飛行試験が開始され、1959年には自力での離陸に成功します。陸軍による試験飛行では21回のフライトが行われましたが、事故が発生し、その後の試験でNASAはコックピットを開放式に改装して性能を再評価しました。この試験により、STOL（短距離離着陸性能）は確認されたものの、垂直離着陸の成功には至りませんでした。

退役後の扱い

最終的にライアン VZ-3は退役し、現在はアラバマ州のアメリカ陸軍航空博物館に展示されています。その独特なデザインと試験経歴から、航空機愛好家や研究者から注目され続けています。

機体の基本情報

• - 全長: 8.43メートル
• - 全幅: 7.14メートル
• - 全高: 3.25メートル
• - エンジン: ライカミングT53-L-1 ターボシャフトエンジン1基（出力1,000軸馬力）
• - 乗員: 1名

以上のように、ライアン VZ-3は垂直離着陸機の研究において重要な役割を果たし、その成果は現代の航空技術や実験機の発展に影響を与えるものとなりました。

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