W (アルバム)

ARB 『W』 (ダブリュー)

『W』は、日本のロックシーンで独自の存在感を放つバンド、ARBが1982年6月21日にリリースした、キャリアにおいて5枚目のスタジオ・アルバムです。この時期のARBは、精力的な活動を展開しており、本作はその充実ぶりを音楽で表現した一枚と言えるでしょう。

全11曲を収録したこのアルバムは、バンドの中心人物である石橋凌と田中一郎に加え、外部のソングライターも迎え入れることで、バラエティ豊かな楽曲群が収められています。編曲は全曲をバンド自身が担当しており、ARBならではのタイトで力強い演奏がそれぞれの楽曲に息吹を与えています。

楽曲制作の体制

本作の楽曲制作は、複数の作詞家・作曲家によって担われています。

作詞: ボーカリストの石橋凌が多くの楽曲で作詞を手がけています。彼の詞は、社会への視点や人間の内面を鋭く描いたものが多いのが特徴です。一方、ロック詩人としても知られる柴山俊之も作詞で参加しており、「愛しておくれ」「クレイジー・ラブ」の歌詞を提供しています。

作曲: ギタリストの田中一郎が多くの楽曲の作曲を担当し、バンドのロックサウンドを支えています。また、石橋凌自身も「Heavy Days」や「モノクロ・シティ (MAN STAND UP,WOMAN YOU,TOO)」で作詞・作曲を手がけており、彼の音楽的感性が発揮されています。さらに、「クレイジー・ラブ」では外部作曲家である木戸やすひろが楽曲を提供しており、バンドサウンドに新たな側面を加えています。

収録曲とその特徴

アルバムには以下の11曲が収録されています。

1. ウィスキー&ウォッカ (作詞:石橋凌 作曲:田中一郎)
2. ユニオン・ロッカー (作詞:石橋凌 作曲:田中一郎)
3. Heavy Days (作詞・作曲:石橋凌)
4. 二人のバラッド (作詞:石橋凌 作曲:田中一郎)
5. 愛しておくれ (作詞:柴山俊之 作曲:田中一郎)
6. モノクロ・シティ (MAN STAND UP,WOMAN YOU,TOO) (作詞・作曲:石橋凌)
7. SIX,SEX,SAX (作詞:石橋凌 作曲:田中一郎)
8. エイリーン (作詞:石橋凌 作曲:田中一郎)
9. ロフト23時 (作詞:石橋凌 作曲:田中一郎)
10. ハ・ガ・ク・レ (作詞:石橋凌 作曲:田中一郎)
11. クレイジー・ラブ (作詞:柴山俊之 作曲:木戸やすひろ)

収録曲のうち、「エイリーン」は本作の前にリリースされた7枚目のシングルのカップリング曲として発表されていました。また、アルバムの最後に収録されている「クレイジー・ラブ」は、同じく7枚目のシングルの表題曲として先行リリースされており、作詞に柴山俊之、作曲に木戸やすひろを起用した楽曲として注目されました。

石橋凌と田中一郎による中心的な楽曲制作に加え、柴山俊之や木戸やすひろといった外部からの提供曲が加わることで、『W』は多様な音楽性を内包した作品となっています。ロックンロールの衝動から社会派の視点、そして切ないバラードまで、当時のARBが持つ表現力の幅広さを感じ取ることができます。

アルバムの意義

『W』は、ARBのキャリアにおいて一つの重要な通過点となる作品です。多様なソングライターが参加しつつも、ARB自身による編曲と演奏によって一貫したサウンドが貫かれています。1980年代初頭の日本のロックシーンにおいて、社会に対するメッセージ性と骨太なロックサウンドを両立させていたARBの、当時の勢いを真空パックしたようなアルバムと言えるでしょう。収録された楽曲の数々は、その後のライブでも演奏され、ファンに長く愛されています。本作を通じて、当時のARBが探求していた音楽の世界観を垣間見ることができるでしょう。

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