W・M・ケック天文台

ケック天文台：宇宙探査の最前線

ハワイ島マウナケア山頂、澄み切った空気と絶好の観測条件に恵まれた場所に位置するケック天文台は、世界をリードする天文観測施設の一つです。2基の10メートル光学近赤外線望遠鏡を備え、宇宙の謎解明に大きく貢献しています。その隣には、日本のすばる望遠鏡がそびえ立ち、天文学研究の国際的な拠点となっています。

ケック天文台の設立と運営

ケック天文台という名は、石油事業で巨万の富を築いたアメリカの実業家、ウィリアム・マイロン・ケック氏に由来します。彼の設立したW・M・ケック財団からの1億4000万ドル以上の多額の寄付金によって建設が実現しました。天文台の運営は、カリフォルニア天文学研究協会（California Association for Research in Astronomy）が行っています。

2基の巨大な望遠鏡は、単独での観測だけでなく、相互に連携することで光赤外干渉計としても機能します。これは、非常に高い解像度で宇宙を観測することを可能にする技術です。ヨーロッパ南天天文台にあるVLT（Very Large Telescope）なども同様の機能を持つ望遠鏡として知られています。天文台の施設は、マウナケア山頂にある観測施設と、ハワイ島のワイメアにある本部事務所から構成されています。

10メートル望遠鏡の驚異的な技術

ケック天文台の最大の特徴は、その巨大な主鏡です。有効口径10メートル（正確には9.62メートル）という、単一鏡では実現が困難なサイズを、36枚の六角形の鏡を繋ぎ合わせることで実現しています。各鏡は1.8メートル対角線、厚さ75ミリメートル、重さ400キログラムの低膨張ガラスから作られています。

これらの鏡をつなぎ合わせる技術に加え、補償光学装置による精密な制御も、ケック天文台の性能を支える重要な要素です。補償光学装置は、大気による光のゆらぎをリアルタイムで補正し、鮮明な画像を得るための技術です。0.1秒ごとに各鏡の支持装置（アクチュエーター）を微調整することで、重力による変形などを補正し、高精度な観測を可能にしています。中心部の鏡を取り付けていないのは、副鏡によるロスを減らし、カセグレイン焦点部の設置を可能にするためです。

望遠鏡の架台は経緯台方式を採用しています。これは、コンピュータ制御による3軸精密制御が可能になったことで実現しました。ケックI望遠鏡とケックII望遠鏡は構造が同一で、ナスミス焦点系から導かれた光は、ドーム下の光路を通って干渉計室に送られ、光赤外干渉計として使用できます。さらに、アメリカ航空宇宙局（NASA）のOHANA計画では、ケックI・II望遠鏡と5つのサテライト望遠鏡を組み合わせた大型光干渉計として運用されています。

ケック天文台による重要な観測成果

ケック天文台は、数々の画期的な観測成果を挙げています。

DEEP計画: 宇宙の大規模構造を探査する大規模プロジェクトで、現在も継続中。
太陽系外地球型惑星の発見: ケック天文台による観測が、地球型惑星の発見に貢献。

これ以外にも、ケック天文台では数多くの論文が発表されており、天文学の発展に大きく寄与しています。その成果は、宇宙の進化、銀河の形成、惑星系の起源など、幅広い分野にわたっています。ケック天文台は、今後も最先端の技術と研究者たちの努力によって、宇宙の謎解明を推進し続けるでしょう。

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