W.9 (航空機)

シエルバ W.9の概要

シエルバ W.9は、1940年代にイギリスで試験的に開発された試作ヘリコプターです。この機体は、メインローターの制御に特有の技術を用いており、可傾式ハブを採用することで、ローターの動きを調整しています。さらに、トルク補正のために機体の後部から吹き出す空気流を活用する独自の設計も特徴です。

開発の経緯

1943年、主要な出資者であるG & J. ウィアー有限会社が、空軍省からの仕様E.16/43に応じてシエルバ・オートジャイロ・カンパニーを復活させました。このプロジェクトは、試作ヘリコプターの開発を目的としており、これにより新しい技術を採用するチャンスが訪れました。

W.9は、ジェームズ・ジョージ・ウィアーの提唱に基づき、自動コレクティブピッチ制御を具備したヘリコプターとして設計されました。この機体は、ティルティング・ハブにより制御されるローターや、トルクを打ち消すためのジェット方式の空気流を研究することを目指していました。これは、シコルスキーR-4の従来の手動制御システムに対する、より安全で効率的な代替案とされていました。

1944年の遅い時期にW.9は完成し、シリアル番号「PX203」が付与されましたが、地上試験中にピッチとフラップの不適切な位相制御が原因で損傷を受け、飛行試験は1945年まで開始できませんでした。

外観と特徴

このヘリコプターの主な特徴は、従来の尾部テイルローターを用いず、後部から吹き出す空気流でトルクを打ち消す点にあります。また、エンジン冷却には可変ピッチのファンが使用され、エンジンの排気や加熱された空気が長大なテイルブームを通じて排出されます。操縦士はファンのピッチをフットペダルで制御し、機体の安定性を向上させていました。

さらなる革新として、W.9には自動コレクティブピッチ制御システムが装備され、手動でのピッチ調整も可能となっていました。これにより、ホバリング時の垂直制御が向上し、オートローテーション時の着陸時に衝撃を軽減する機能が added.

デモンストレーションとその後

1946年6月22日、W.9はサウザンプトンで行われた航空展示会において、初めて公の場でデモンストレーションを行いました。その後、同年の第7回イギリス航空宇宙企業団体（SBAC）においても展示が行われました。

しかし、1946年に発生した事故によりW.9は破損し、プロジェクトは中止されることとなります。なお、W.9のローターハブの部品は、後のW.14スキーターの試作機に使用されたことが知られています。

基本情報

W.9の設計に関する主なデータは以下の通りです。

• - 乗員数: 2名
• - 全長: 11m
• - 全高: 3.0m
• - 全備重量: 1,201kg
• - 主エンジン: デ・ハビランド ジプシー・クイーン31（6気筒空冷直列ピストンエンジン、205hp、1基）
• - メインローター直径: 10.97m
• - メインローター翼面積: 94.5平方m

結論

シエルバ W.9は、当時の航空技術において革新的な試みであり、その設計には貴重な教訓が含まれていました。計画は事故の影響で終了しましたが、この機体がもたらした技術は後のヘリコプター開発に影響を与えたと言えるでしょう。

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