W1ララバイ

『W1ララバイ』：青春とバイク、そして世代を超えた友情の物語

1982年、日本のバイク雑誌『ミスターバイク』に掲載された広井てつお氏による漫画作品『W1ララバイ』は、単なるバイク漫画の枠を超えた、青春と友情、そして人生の機微を描いた感動的な物語です。

主人公は、17歳の高校生、池上隆一。彼は、父親から譲り受けたカワサキW1SAに乗り、バイクを通じて様々な経験を積んでいきます。ある日、隆一は70歳にもなる老ライダーと出会います。老ライダーは、風格漂う佇まいと、W1SAを自在に操る卓越したテクニックで、隆一の心を掴みます。

この出会いをきっかけに、隆一と老ライダーは深い友情で結ばれていきます。年齢も経験も全く異なる二人ですが、バイクという共通の趣味を通して、互いの心の奥底にあるものを共有し、理解し合っていきます。物語は、二人の交流を通して、青春の喜びや葛藤、人生の深みなどを静かに、そして力強く描き出していきます。

特に印象的なのは、物語の後半で描かれる老ライダーの九州への旅です。息子に会うため、彼は愛車のW1SAで長旅に出かけます。その旅立ちを見送る隆一は、老ライダーの安全を祈念し、自らがペイント作業をしていた壁に「航海の安全を祈る」を意味するUWという文字を書き込みます。このシーンは、二人の友情の深さ、そして老ライダーへの敬意と温かい想いが感じられる、感動的な場面となっています。

隆一の愛車であるカワサキW1SAもまた、物語の重要な要素です。コンチハンドル、CB72ウィンカー、ルーカステールランプ、バーエンドミラーなど、さりげなく施されたカスタムは、バイクへの愛情と、主人公の個性を際立たせています。実はこのW1SAは、広井てつお氏自身の愛車をもとに描かれており、作品全体にリアリティを与えています。

『W1ララバイ』は、単なるバイク漫画としてだけでなく、世代を超えた友情、そして人生の様々な側面を描いた、深く心に響く物語です。派手なアクションやドラマチックな展開はありませんが、その等身大の描写こそが、多くのライダーや読者の共感を呼び、広井てつお氏の知名度を飛躍的に向上させました。

『W1ララバイ』の成功を受け、広井てつお氏はその後も『'60S サウンドリバイバル』『ノースランド コンチェルト』『ハードロックライダー』（単行本では『ロックンロールライダー』に改題）など、多くの続編を創作しています。これらの作品も、バイクを題材としながらも、それぞれの個性あふれる物語が展開され、読者を魅了し続けています。単行本は日本出版社と少年画報社からそれぞれ発行されています。また、『ミスターバイク』誌の臨時増刊号にも複数の作品が収録されるなど、高い人気を誇るシリーズです。

『W1ララバイ』は、単なるバイク漫画という枠を超え、時代を超えて愛される作品として、これからも多くの読者に感動を与え続けることでしょう。

もう一度検索