W91 (核弾頭)

W91核弾頭の概要

W91は、アメリカ合衆国が開発した核弾頭であり、特にSRAM-T（空対地ミサイル）用に設計されたものです。この弾頭は1980年代にロスアラモス国立研究所で開発が進められました。核技術の進展と冷戦時代の緊張が高まる中で、その安全性と効果を高めることが重要視されました。

物理的特性

W91は、その重量が310ポンド（約140キログラム）に設定されており、二つの異なる出力選択肢を持っていました。具体的には、10キロトンから100キロトンの範囲で核出力を選択できる方式です。このフレキシビリティにより、様々な軍事的シナリオにおいて適切な威力を発揮することが可能となっていました。

安全性向上の技術

W91弾頭の設計には、事故時の安全性を高める工夫が施されていました。例えば、爆縮レンズに使用される爆薬にはトリアミノトリニトロベンゼンを主成分とした低感度爆薬であるPBX爆薬が採用されています。この材料により、発火リスクを引き下げつつ、必要な威力を確保することを目標としました。

加えて、コア部分の耐火性向上にも貢献する設計が意図されており、運用中のトラブル発生時にも壊滅的な事故を防ぐ手段が講じられていました。

開発の歴史と背景

W91は、冷戦が進行する中での出発点として大きな意味を持つ核兵器となっていました。しかし、1980年代の終わりから冷戦終結に向かうにつれて、地政学的な状況は大きく変化します。これに伴い、SRAM-Tミサイルの開発が中止となり、結果的にW91核弾頭も1991年9月に開発中止が発表されました。

影響と遺産

W91の開発中止は、アメリカの核戦略における大きな転換点を示すものでした。冷戦の終結とともに、核兵器の必要性についての議論が新たな段階へと移行していく中で、W91のような新型核弾頭の開発はもはや優先事項ではなくなっていきました。

このように、W91核弾頭は冷戦時代におけるアメリカの軍事戦略の進化を象徴する存在であり、その開発過程や技術的特性は、今後の核兵器に関する議論にも影響を与えることが予想されます。

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