WCBS-TV

WCBS-TVは、アメリカ合衆国の主要放送ネットワークであるCBSのニューヨーク支局であり、同系列における最大かつ最も歴史ある「旗艦局」として知られています。1941年 7月1日に正式に設立され、ニューヨーク市とその周辺地域に向けて多様な番組、特にニュースと情報を提供しています。

その起源はさらに古く、1931年 7月31日にCBSが実験的に開設した「W2XAB」に遡ります。この局は当初ラジオ放送や、週に28時間という当時としては画期的な長時間にわたるテレビ放送を実施し、アメリカの放送業界における初期の実験をリードしました。1932年 11月3日には、アメリカ史上初となるテレビでの大統領選挙報道を行っています。一時的な中断を経て、1940年にはアメリカ初のカラーテレビ放送を試験的に行うなど、技術革新にも貢献しました。1941年 6月24日に商業放送ライセンスを取得し、「WCBW」と改称。同年7月1日の開局放送では、国内で初めてとなるローカルニュースを放送しました。現在の名称である「WCBS-TV」となったのは、1946年 11月1日のことです。

局の拠点はマンハッタンのミッドタウンに位置し、電波は同じくマンハッタンのランドマークであるエンパイアステートビルから送信されています。アナログ放送はチャンネル2、デジタル放送はチャンネル36（リモコン番号2）を使用しており、衛星放送サービス（ディレクTVやDISH NETWORK）を通じても視聴可能です。キャッチコピーは「We are CBS2」。1997年からは、ロサンゼルスのKCBS-TVやシカゴのWBBM-TVといった姉妹局と共に「CBS2」という統一呼称を用いるようになりました。

WCBS-TVは、その長い歴史の中で、アメリカのローカルニュース報道において重要な役割を果たしてきました。特に、政治や経済といった分野における徹底した調査報道は高く評価されており、シカゴのWBBM-TVなど他の系列局にも影響を与えました。報道業界の著名人、例えばCBS 特派員やWCBS-TVのメインキャスターを務めたロバート・トロントのような人物がキャリアを築いた場所でもあります。

1980年代には、同時間帯のニュース番組で競合局を大きく引き離し、常に高い視聴率を誇っていました。ロナルド・スミス、キャロル・マーティン（初の女性アフリカ系アメリカ人ニュースキャスター）、フランク・フィールドといった著名なキャスターたちが活躍し、ニューヨークのテレビ界で伝説的存在となりました。しかし、1970年代以降はWABC-TVやWNBCといったライバル局との間で激しい視聴率競争が展開され、その中で首位の座を譲る時期もありました。特に1987年以降は視聴率が低迷し、1994年には長年局の顔であったキャスター、ジム・ジェンセンの降板が大きな論争を巻き起こしました。さらに、1995年にウェスティングハウス・エレクトリック社がCBS放送を買収したことで、経営効率化を目的とした大規模な人員削減が実施されることになります。

1996年 10月2日に行われた抜き打ちの大量解雇は「虐殺（Massacre）」と呼ばれるほど衝撃的な出来事であり、7人の主要なニュースチームメンバーが職を失いました。これは視聴率改善と親会社からの収益圧力の結果でしたが、皮肉にもこれを機としたニュースチームの再編成が奏功し、1997年には視聴率が回復し、局のイメージも刷新される結果となりました。

2000年代に入ると、ニュースディレクターの交代に伴い、報道方針にも変化が見られました。一時期はタブロイド的な内容を取り入れる試みもありましたが、これは成功せず、その後は再び政治や経済といった硬派なニュースに注力する路線に戻りました。この方針転換は、エミー賞受賞ドキュメンタリー「Shame on you」の復活や、ニューヨークエリアのレストランの衛生問題を追及する「Eat at Own Your Risk」といった調査報道番組の立ち上げに繋がりました。しかし、視聴率の伸び悩みや、特定の報道内容を巡る論争、著名キャスターの解雇といった出来事も発生し、局の運営は常に注目を集めてきました。

WCBS-TVは、近隣の姉妹局であるフィラデルフィアのKYW-TVと協力し、CBS支局がないニュージャージー州向けの政治討論番組を共同制作するなど、地域連携にも力を入れています。また、過去にはニューヨーク・ヤンキースの試合を独占放送していた時期もありました。デジタルメディアの進化に対応し、ウェブサイト上でのニュース番組「CBS2 at your desk」を配信するなど、新たな視聴形態にも取り組んでいます。さらに、気象予報チームはケーブルテレビ局と提携し、高度な気象レーダーシステムを活用するなど、報道技術の向上にも努めています。

ニューヨークの放送市場における厳しい競争の中で、WCBS-TVはその長い歴史と、硬派なジャーナリズムの伝統を基盤としながら、常に変化と挑戦を続けています。多くの著名なジャーナリストを輩出し、アメリカのローカルテレビニュースのあり方に影響を与え続けている、ニューヨークを代表する放送局の一つです。

主な放送地域

ニューヨーク州
ニュージャージー州
* コネチカット州 (フェアフィールド、ニューヘヴン、リッチフィールド)

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