WILD CATS (漫画)

『WILD CATS』は、漫画家・清水玲子氏による、心温まる感動の物語です。1997年から2000年にかけて『LaLa』誌上に掲載され、その後、単行本として幾度も刊行されました。

物語の中心は、主人公の筧龍一と、彼によって拾われたライオンのシーザーの交流です。龍一は、捨てられていたシーザーを子猫だと勘違いして自宅に連れ帰ります。しかし、シーザーは実はライオンの子。猫のような可愛らしさとは程遠く、弱々しく、ネズミさえ捕まえられない臆病な一面を持っています。

龍一は、シーザーを「強い猫」にしようとしますが、シーザーはなかなか龍一の期待に応えられません。龍一は、シーザーの弱さの中に、自分自身と重ねる部分を見出していきます。いじめに遭い、孤独を抱える龍一にとって、シーザーの存在はかけがえのないものになっていきます。一方、シーザーは龍一を「ぼっちゃん」と呼び、彼への深い愛情を示します。

物語は、シーザーがライオンであることが周囲に知られることで、様々な困難が降りかかってくる様子を描きます。龍一は、シーザーを動物園に送ることを勧められるなど、辛い選択を迫られますが、シーザーへの揺るぎない愛情と、周囲の人々との触れ合いを通して、シーザーを守ることを決意します。

シーザーは、龍一への愛情ゆえに、本来のライオンとしての本能を抑え込みます。爪を立てたり、牙をむいたりすることはありません。龍一と一緒に眠ることを好みますが、その大きな体で布団やベッドを独り占めしてしまうなど、ユーモラスな描写も散りばめられています。

『WILD CATS II』では、盲導犬の訓練を受けるラブラドール・レトリバー、トングが登場します。人間との関係に翻弄されながらも、最後に盲導犬としての役割を果たすトングの姿は、シーザーと龍一の関係性とはまた違った、愛と絆の物語を描き出しています。

『WILD CATS III』では、龍一の高校時代のクラスメイトである菊池舞との恋物語が描かれます。龍一は舞に惹かれますが、シーザーへの愛情と、舞への愛情の間で葛藤します。シーザーへの深い愛情を優先した龍一の選択は、舞との関係に終止符を打ちます。

龍一とシーザー、そして彼らを取り巻く人々の温かい交流を通して、この作品は、異なる種族の生き物同士の絆、そして人間同士の愛情の様々な形を描き出しています。一見すると、非日常的な設定ですが、そこには普遍的なテーマが潜んでいます。

『WILD CATS』は全3話という短い作品ですが、それぞれのエピソードが深く心に響く、読み応えのある作品です。単行本には、他に『秘密 ―トップ・シークレット―』やイラスト集『FLOWERS』なども収録されており、作品の世界観をさらに深く知ることができます。単行本は、花とゆめコミックス版と、ジェッツコミックス完全版の二種類が刊行されています。完全版には、描き下ろし作品も収録されているとのことです。

この作品は、動物愛護や、異なる存在との共存といったテーマにも触れており、読み終えた後には、生命の尊さや、愛の力について改めて考えさせられるはずです。

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