WMAP

ウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機（WMAP）

ウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機（Wilkinson Microwave Anisotropy Probe: WMAP）は、アメリカ航空[[宇宙局]]（NASA）が打ち上げた宇宙探査機で、ビッグバンによって生じた宇宙マイクロ波背景放射（CMB）の全周観測を専門としています。この探査機は2001年6月30日にアメリカのケープカナベラルから打ち上げられ、2010年8月まで観測を行いました。

WMAPの目的と設計

WMAPの主な使命は、CMBの微小な温度変動を観測し、宇宙の構造や進化を解明することにあります。この探査機は、先行のCOBEミッションの後継機として位置付けられ、多くの中型探査機（MIDEX）の一部として開発されました。当初、WMAPは「MAP（マイクロ波異方性探査機）」と名付けられましたが、2002年に著名な天文学者デビッド・ウィルキンソンの死去を受けて、彼の名前が冠されることとなりました。

WMAPの科学的目標は、CMBの相対温度を高精度で測定し、宇宙の構造や進化に関するさまざまな理論の検証に役立てることです。具体的には、CMBの相対温度を0.3度以内の角分解能で測定し、感度を20µK、系統誤差を5µK以内に抑えることが求められました。このため、探査機には温度差を計測する差分マイクロ波ラジオメータが搭載されました。

WMAPは、太陽と地球のL2ラグランジュ点近くの地点から観測を行います。この場所は、宇宙の深部を遮るものなく観測できるため、非常に安定した環境を提供します。観測の際は、約6か月ごとに全天を観測するため、地球の公転に合わせてL2も太陽の周囲を回ります。これにより、CMB観測の精度を向上させることができます。

顕著な成果

WMAPの観測によって、宇宙の年齢は約137億年であることが確認され、宇宙のサイズは780億光年以上と算出されました。宇宙の組成は、通常の物質が約4%、正体不明のダークマターが約23%、ダークエネルギーが約73%を占めることも明らかになりました。この結果は、Λ-CDMモデルという現在の宇宙モデルとの一致を示しています。また、インフレーション宇宙論のシナリオも観測結果と一致しており、ハッブル定数は約71 km/s/Mpcとされています。

WMAPのデータは、宇宙が中性化した時期やその後の再電離の時期についての情報を提供し、これまでの理論を補完する重要な役割を果たしました。例えば、観測により、ビッグバンから約2億年後に宇宙が中性化した結果が示され、その後の天体の形成に伴い再電離が起きたことが明らかにされました。

まとめ

WMAPは、宇宙の理解を深める上での画期的な成果を上げ、宇宙論分野において多くのパラメータを高精度で測定したことから、その重要性が高く評価されています。観測ミッションは2020年9月に終了しましたが、その成果は現在も宇宙科学において大きな影響を与え続けています。

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