Windows Subsystem for Linux

Windows Subsystem for Linux (WSL)とは

Windows Subsystem for Linux（WSL、Linux用Windowsサブシステム）は、Microsoftが提供するWindows 10/11およびWindows Server上でLinuxプログラムを実行するための互換レイヤーです。従来の仮想マシンや互換レイヤーとは異なり、Windows OSの一部として公式に提供されている点が特徴です。WSLには、異なるアプローチを採用した2つのバージョン、WSL1とWSL2が存在します。

WSL1

WSL1は、LinuxのシステムコールをWindowsのシステムコールに変換する互換レイヤーとして機能します。このアーキテクチャは、Cygwinなどの互換レイヤーに近いものですが、Linuxの実行ファイル形式であるELFをそのまま利用できる点が異なります。WSL1は、仮想マシンと比較してリソース消費量が少ないという利点がある一方で、すべてのLinuxソフトウェアを実行できるわけではありません。WSL1では、グラフィカルインターフェースを持つアプリケーションを使用するために、XサーバをWindows上に別途インストールする必要があります。初期のWSLは、Windows 10の開発者モードを有効にする必要がありましたが、後のバージョンでこの制限は撤廃されました。

WSL2

WSL2は、従来のWSL1とは異なり、Hyper-V仮想マシン上で実際のLinuxカーネルを実行します。この設計により、WSL1よりも高い互換性を実現し、ディスクI/O性能も向上しました。WSL2では、Linux側のファイルシステムがディスクイメージファイルに格納され、ホストであるWindowsとは異なるIPアドレスを使用します。ただし、WSL2は起動に数秒を要し、メモリ使用量が増加するというデメリットもあります。

WSLの歴史

WSLは、2016年のBuildカンファレンスで発表され、当初はWindows 10 Insider Previewビルドで公開されました。その後、Windows 10 Anniversary Updateでベータ版がリリースされ、Windows 10 Fall Creators Updateで正式版が提供されるようになりました。当初はUbuntuのみがサポートされていましたが、正式版リリース後、多様なLinuxディストリビューションがサポートされるようになりました。

WSLの対象ユーザーと目的

マイクロソフトは、WSLを主に開発者、特にWeb開発者やオープンソースプロジェクトに関わる開発者のためのツールと位置づけています。WSLを使用することで、開発者はWindows環境を離れることなく、Linux環境での開発、テスト、デバッグなどの作業を効率的に行うことができます。

対応ディストリビューション

WSLは、複数のLinuxディストリビューションをサポートしており、Microsoftストアからインストールできます。各ディストリビューションは独立して動作するため、複数のディストリビューションを同時に使用することも可能です。WSLのインフラストラクチャとツールのサポートはMicrosoftが、ディストリビューション内部のサポートはディストリビューションの配布元がそれぞれ提供しています。主な対応ディストリビューションには、Ubuntu、openSUSE、SUSE Linux Enterprise Server、Kali Linux、Debian GNU/Linuxなどがあります。

WSLの使用例

WSLを使用すると、以下のような操作が可能です。

Linuxパッケージのアップデート
Linuxコマンドラインツールの実行（例：ls, date, sort, uniq）
プログラミング言語のインタープリターの実行 (例: Ruby, Python)
X Window Systemを使用したGUIアプリケーションの実行
Windowsコマンドとの連携
Windowsのデスクトップにあるファイルの操作

まとめ

WSLは、Windows上でLinux環境をシームレスに利用できる強力なツールです。WSL1とWSL2の違いを理解し、自身の開発ニーズに応じて最適なバージョンを選択することで、開発効率を大幅に向上させることができます。また、多様なディストリビューションをサポートしているため、特定の開発環境に縛られることなく、自由な環境構築が可能です。

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