X-20 (宇宙船)

X-20（ダイナソア）概要

X-20は、アメリカ国防総省が計画し、ボーイング社が設計・開発を進めた革命的な宇宙偵察機です。この機体は「ダイナソア」という愛称で広く知られていますが、その名は、特有の飛行方法である「ダイナミック・ソアリング」から取られています。この機体の目的は、地球上空からの高解像度の偵察に加え、最終的には宇宙からの核兵器攻撃も視野に入れての設計でした。

歴史背景

X-20の開発は1950年代末に遡ります。当時、アメリカ国防総省は、ナチス・ドイツから持ち帰った航空宇宙関連の資料に含まれていたSilbervogelに強い影響を受けた結果、独自の有人宇宙機の構想を練り始めました。これは、ロケットによる垂直打ち上げ後に、大気圏上層部を滑空する新方式の航空機の開発を目指していました。この新しい飛行方式は、まるで水面を跳ねる小石のようなイメージから来ており、将来的には偵察や攻撃のミッションに使われる計画でした。

はじめにBomi（bomb missile）案が1952年に提示され、その後も有機的な進化を遂げながら、1959年にはボーイングが発注を受ける形で正式な計画に至りました。X-20は、カムフラージュのためにXプレーンの一環として扱われ、その名称が与えられました。

実験とテスト

1961年までに、本機の実物大モックアップが完成し、ニール・アームストロングなどの優秀なパイロットが選ばれました。1963年にはB-52が用いられ、滑空テストが行われましたが、同時期にアメリカ航空宇宙局（NASA）が進めていたマーキュリー計画の成功や、それに続くジェミニ計画の開始が影響し、X-20計画は徐々に厳しい視線にさらされました。

国防長官のロバート・マクナマラは、宇宙市場における二重投資の無駄を指摘し、莫大な経費とその効果の薄さを理由に1963年に計画の中止を決定しました。この決定により、X-20は実機を作ることなく終了し、すでに完成したモックアップや関連資料も破棄されました。

機体設計

X-20の機体設計には特筆すべき特徴があり、72度の後退角を持つデルタ翼が採用されていました。これは大気圏再突入時の安定性を考慮した結果です。翼端にはウィングレットのような垂直安定板が設けられ、将来的な運用においても高い操縦性を確保するための工夫がなされました。機体の打ち上げには、タイタンロケットやサターンロケットが使用される計画が立てられていました。

以下は、X-20の主な諸元です。

• - 全長：10.76 m
• - 全幅：6.22 m
• - 全高：2.44 m
• - 自重：4,912 kg（全備重量5,167 kg）
• - 到達速度：26,827 km/h
• - 到達高度：160 km
• - 乗員：1名

フィクションの中のX-20

この宇宙機の夢は他の舞台でも語られています。笹本祐一のSF小説『星のパイロット』シリーズには、X-20の能力を受け継いだ架空の民間用シャトルが登場します。また、アメリカのテレビドラマ『トワイライト・ゾーン』のエピソードにもその名が見られ、X-20にまつわる物語が描かれています。X-20は想像力を掻き立てる存在として、今もなお語り継がれています。

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