XACT

XACT（イグザクト）とは

XACT（イグザクト）は、マイクロソフトがDirectXの一部として開発・提供していたオーディオプログラミングライブラリおよびオーディオエンジンです。ゲーム開発における高度なオーディオ処理を支援するために設計されており、オーディオの作成から再生までを包括的に扱うことができました。

主要な特徴

高レベルオーディオライブラリ: オーサリングと再生の両方をサポートし、開発者は複雑なオーディオ処理を容易に実装できました。
プラットフォーム対応: XboxではXAudio、Windows XPではDirectSound、Windows Vista以降では新しいオーディオスタックを利用し、異なるプラットフォームでの動作を可能にしました。
X3DAudioの統合: WindowsとXbox両方で利用可能な空間音響ヘルパーライブラリX3DAudioを含んでおり、臨場感あふれる3Dオーディオを実現できました。
XNA Game Studioとの連携: XACTは、DirectXからXNAへと引き継がれ、XNA Game StudioでもXACT Audio Authoring Toolが利用可能でした。

XACT Audio Authoring Tool

XACT Audio Authoring Toolは、オーディオデータを構成するためのアプリケーションで、以下の機能を提供していました。

Wave Banks（.xwb）: 複数のWAVファイルを単一のアーカイブファイルにまとめることができます。
Sound Banks（.xsb）: Wave Banks内のWAVファイルを再生するための命令をまとめた単一のファイルです。サウンドの再生順序やタイミングなどを定義できました。

これらのファイルはアプリケーション内でXACTから呼び出され、ゲーム中のサウンド再生に使用されました。

Windows環境での利用

Windows環境でXACTを利用するには、DirectXエンドユーザーランタイムのインストールが必要でした。ただし、Windows 8用のソフトウェア開発キットであるWindows SDK 8.0以降では、DirectX SDKがWindows SDKに統合された際に、XACTは廃止されました。現在では、DirectX Tool KitにXNA Game Studioのオーディオコンポーネントに似た代替ライブラリが実装されています。

XACTの音楽作成機能

XACTは、多様なオーディオフォーマットをサポートし、柔軟な音楽制作環境を提供していました。

対応フォーマット: WAV、AIFF、XMA、xWMA形式に対応しています。
ループポイント: WAVとAIFFフォーマット内の埋め込みループポイントもサポートしており、シームレスなループ再生が可能でした。
スピーカー構成: ステレオと5.1chスピーカーに対応し、幅広い環境で最適なオーディオ体験を提供できました。

音声の編集機能

XACTは、オーディオの編集においても強力な機能を提供していました。

Wave Banks: 複数のオーディオファイルをWave Banks (.xwb) にグループ化し、効率的な管理を実現しました。
Sound Banks: キューや再生指示を音データと一緒にSound Banks (.xsb) にまとめ、複雑なオーディオ制御を容易にしました。
オーディオプレビュー: オーディオコンソールウィンドウでオーディオをプレビューでき、編集作業を効率化しました。
デバッグモード: デバッグモードライブラリを使用して、ゲーム内でリアルタイムにオーディオ設定を調整することができました。

XACTのAPI

XACT APIは、ゲーム開発におけるオーディオ機能の実装を強力にサポートしていました。

統合的なAPI: 音楽、効果音、演奏キュー情報を開発段階から統合できるAPIを提供していました。
メモリ管理: メモリ蓄積型（In-Memory）とストリーミングの両方をサポートし、状況に応じて最適な方法でオーディオデータを扱えました。
オーディオイベント: オーディオイベントを検知でき、ゲームロジックと連動した高度なオーディオ制御が可能でした。
低レベルAPI: すべてのXACT音声編集機能を使用しなくても、音データの読み込みと再生ができる低レベルAPIも提供していました。
3D音響: X3DAudio APIを介した3次元音響効果「XACT 3D」（DirectSound3Dの後継機能）を提供し、没入感の高いサウンド体験を実現できました。

XACTの用語とファイル種別

XACTには、特有の用語とファイル種別が存在します。以下に主なものを解説します。

Sound Banks (.xsb): サウンドとキューのコレクションです。
Sound: ボリュームやピッチなどの特性を持つ、一つ以上の音声を組み合わせたものです。
Tracks: イベントから構成されるもので、最も単純なトラックはWaveを再生するイベントを持ちます。
Events: トラック内で発生するアクションで、再生、停止、ボリューム設定、ピッチ設定などが含まれます。
Cue: 音声を再生するタイミングを記述するものです。
Wave Banks (.xwb): 複数のWaveをまとめたファイルフォーマットです。
Waves: WAV、AIFF、XMAフォーマットで記述されたraw音声データです。
Global Settings (.xgs): 音声に対するルールと設定を定義したものです。
Categories: 音声が割り当てられるカテゴリで、ボリュームなどの設定を共有します。Global、Default、Musicの3つが既定で定義されています。
Variables: 設計段階で定義され、コードから実行時にパラメータ制御を行うためのものです。
Run-Time Parameter Control: スライダーなどによって、音声再生時にパラメータを制御する機能です。
DSP Effect Path Presets (DSPs): リバーブなどのエフェクトを音声に適用するためのものです。
Compression Presets: waveやwave bankに圧縮をかけるためのものです。

関連項目

DirectSound
Microsoft DirectX

外部リンク

Microsoft Docs（旧MSDNライブラリ）
Microsoft Cross-Platform Audio Creation Tool (XACT) | Microsoft Docs)
XACT の概要 | Microsoft Docs)

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