XB-70 (航空機)

XB-70 ヴァルキリー

概要

XB-70 ヴァルキリー（North American XB-70 Valkyrie）は、アメリカ空軍が開発した試作戦略[[爆撃機]]です。正式には2機が製造されましたが、最終的には航空宇宙局（NASA）に譲渡されました。愛称の「ヴァルキリー」は、北欧神話に登場する戦士の名に由来しています。XB-70は、超音速での飛行能力を有し、マッハ3に達することができ、アメリカとソビエト連邦の間を無着陸で往復することが可能とされていました。しかし、大陸間弾道ミサイルの発達により、その必要性が薄れ、正式採用には至りませんでした。現在、オハイオ州にある国立アメリカ空軍博物館に展示されている1号機は、白い機体で識別されています。一方、事故で失われた2号機は黒い機体でした。この超音速爆撃機は、革新的なデザインと悲劇的な運命から、今でも多くの人々に記憶されています。

開発の経緯

1954年、アメリカ空軍は新型爆撃機の開発を決定し、戦略航空軍団司令官であるカーチス・ルメイによって超音速・高高度・長航続距離を有する爆撃機が提案されました。この構想のもと、1955年に「ヴァルキリー計画」が発表され、ノースアメリカン社やボーイング社が設計案を提出しました。この計画では、超音速で飛行するための燃料タンクの特殊な設計が求められましたが、ルメイはそれを「飛行機ではなく、三機の編隊」と一蹴し、再考を要求しました。その結果、ノースアメリカンの設計陣は、デルタ翼デザインに「コンプレッション・リフト」という新理論を取り入れることに成功し、独特な機体が生まれました。

特徴

XB-70の最も顕著な特徴は、デルタ翼の両端が飛行時に折れ下がることです。これは、超音速飛行時の空力的な安定性を持たせるための設計で、特に垂直尾翼の性能を補う役割を果たします。また、機首のデザインもユニークで、高速飛行時には鼻先が平らになり、低速時には凹んだ形状を取ります。外装にはステンレス系合金が用いられており、高温に耐える構造が施されていますが、このために塗装は剥がれやすく、運用中には様々な問題が起こりました。

エンジンとコックピット

XB-70は6基のゼネラルエレクトリック製ターボジェットエンジンを有し、燃料は特別に調整されたJP-6が使用されました。試作機は操縦士2名が搭乗可能で、与圧された操縦席には脱出カプセルが組み込まれ、緊急時にはカプセルごと射出する仕組みでした。

計画の縮小と最終運命

ヴァルキリー計画は多額の費用がかかることから1959年に縮小され、最終的に試作機3機のみで終了することになりました。最初の1号機が完成したのは1964年で、1965年にはマッハ3での飛行にも成功しました。しかし、事故により2号機が失われ、最終的に配備には至りませんでした。

事故と余生

1966年、XB-70の2号機が編隊飛行中にF-104と衝突し、パイロットが死亡する惨事が発生しました。事故後、残された1号機はNASAに移管され、超音速旅客機SSTの研究に利用されることになり、最終的にはオハイオ州の博物館に展示されるに至りました。ここでの研究からは、超音速飛行によるソニックブームの影響が大きいことが示され、SST開発に影響を与えました。

展示機

XB-70の1号機は、試験終了後にオハイオ州の国立アメリカ空軍博物館に展示され、現在も多くの人々にその姿を見せています。技術的な革新と悲劇的な歴史を持つこの機体は、航空機ファンや歴史の愛好者にとって特別な存在となっています。

もう一度検索