戦略航空軍団

戦略航空軍団 (SAC)

戦略航空軍団（Strategic Air Command、略称SAC）は、かつてアメリカ空軍（その前はアメリカ陸軍航空軍）の中心的な軍団として存在した部隊であり、その主な任務は爆撃機の運用による核攻撃能力の強化でした。1946年に設立され、その後1992年まで活動を続けました。この期間において、SACは冷戦時代の核抑止力の要として重要な役割を果たしました。

歴史的背景

1946年3月21日、アメリカ陸軍航空軍は大規模な組織再編を実施し、戦略航空軍団が新たに創設されました。この際、戦術航空軍団と防空軍団も併せて主要な組織として編成されました。1947年のアメリカ空軍の独立後も、SACはその任務を引き継ぎました。特に、1949年から1957年の期間に指揮を執ったカーチス・ルメイ司令官は、戦略爆撃能力の向上と核攻撃の実行能力の拡充に力を注ぎました。

当初からSACは、すでに核攻撃が可能なB-29爆撃機を保有していましたが、1949年にはソ連をターゲットとしたB-36の配備を開始しました。続いてB-47、B-52、B-58などの戦略爆撃機も導入され、これによりSACの核攻撃能力がさらに強化されました。この時期、大型爆撃機からの核爆弾投下が唯一の攻撃手段だったことも、爆撃機の運用を重視する理由となっていました。

また、SACは長距離飛行を可能にするため、多数の空中給油機も運用しており、長時間のミッションを実施することができました。冷戦期間中は、核報復能力を維持するため、爆撃機の空中待機やミサイルサイロの建設・運用を行っていました。初期には護衛戦闘機も保有していましたが、1950年代の後半にはこの運用が戦術航空軍団に委譲され、SACは爆撃機のみに特化した運用体制に移行しました。

この結果、空軍全体として制空戦闘機の重視がほとんど軽視され、特にベトナム戦争では深刻な影響が見られました。

主要な戦争と改編

SACは朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争といった多くの戦争においても部隊を派遣し、通常爆弾を使用した戦略的爆撃を行いました。このように、核攻撃能力だけでなく、通常戦力としての爆撃機運用も行っていました。

1992年には、軍事機材の高性能化と効率的な戦力運用が求められる中で、SACの爆撃機部隊は戦闘機や攻撃機と共に航空戦闘軍団へ再編され、同時に空中給油機部隊は航空機動軍団に移管されました。さらに、大陸間弾道ミサイル部隊は、1993年に空軍宇宙軍団へ移管されましたが、2009年には新たに設立された地球規模攻撃軍団に第8空軍（戦略爆撃）と第20空軍（ICBM）が再び統合されました。

系譜

SACの創設に至るまでの系譜は、以下の通りです。

• - 1944年12月13日: 大陸航空軍が創設され、実働を開始。
• - 1946年3月21日: 大陸航空軍司令部を改編し、SAC司令部が設立。
• - 1948年10月19日: ネブラスカ州オファット空軍基地に移転。
• - 1992年5月31日: SACは廃止され、航空戦闘軍団および航空機動軍団に再編。

主要部隊

SACには多くの主要部隊が存在しました。以下はその一部です。

• - 第2空軍
• - 第8空軍
• - 第15空軍
• - 第16空軍
• - 第20空軍

戦略航空軍団は、アメリカの航空戦力史において重要な役割を果たし続けた部隊であり、その影響は現代の空軍戦略にも受け継がれています。

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