XF10F (航空機)

XF10F ジャガーについて

XF10F ジャガーは、アメリカ合衆国のグラマン社によって開発された艦上戦闘機であり、1952年に初めて飛行しました。この機体は、可変後退翼を持つ戦闘機として世界初であったものの、その実戦配備には至らず、開発の段階で様々な課題を抱えていました。

開発の経緯

1947年に始まったXF10Fの開発当初は、可変後退翼を採用する計画はありませんでした。当時の設計はF9F パンサーに類似した後退翼型を想定していました。しかし、海軍からの要求が次第に増えたため、1949年に可変後退翼の採用が決定されました。これは、初期のジェット機が持つ艦上運用の難しさを解決する意図がありました。

航空母艦での離着陸能力や迅速な運用が求められましたが、特にF7U カットラスの開発から得られた教訓を活かし、高速性と離着艦性能の両立を目指すための設計となりました。主翼は肩翼配置で、尾翼はT字型となっており、艦載機として主翼は上方へ折り畳むことができました。

機体の特徴

XF10Fの主翼は、後退角を13.5度から42.5度まで調整でき、これにより離着陸時の性能向上が期待されていました。重心の変化への配慮から、後退角が増すにつれ主翼の取り付け位置が前方に移動する設計です。エンジンノズルは胴体末尾にあり、機首部脇にインテイクが配置されています。

1950年12月には、XF10F-1型が12機発注されましたが、1952年5月19日の初飛行後には数々の問題が明らかになりました。機体の重量が増し、保守性が低いため、期待された性能が得られませんでした。具体的には、搭載していたJ40ジェットエンジンの出力が不足しており、このエンジンは他の機体の開発にも悪影響を及ぼしました。

結果と影響

特に、可変後退翼に伴う飛行特性の変化が操縦困難さをもたらし、これが最大の欠点とされました。この時代の技術では、飛行特性の変化に対する自動補正は不可能でありました。さらに、スチームカタパルトとアングルド・デッキの実用化が進み、空母での運用の難しさが軽減されたことで、本機の開発の意義は薄れました。

最終的には、計112機が発注されていましたが、1953年4月にこの計画は中止されています。その後、グラマン社はF11F タイガーという通常の後退翼を用いた戦闘機の開発に移行しました。可変後退翼を持つ艦上戦闘機の実用化は、F-14 トムキャットにおいて初めて実現しました。

性能データ（XF10F-1）

• - 乗員: 1名
• - 全長: 17.01 m
• - 翼幅:

- 伸張時: 15.42 m (後退角 13.5度)
- 後退時: 11.17 m (後退角 42.5度)

• - 全高: 4.95 m
• - 翼面積:

- 伸張時: 43.38 m²
- 後退時: 41.8 m²

• - 空虚重量: 9,265 kg
• - 最大離陸重量: 16,080 kg
• - エンジン: ウェスティングハウス J40-W-8 ターボジェット
• - 出力: 6,800 lbf (30.2 kN)
• - 最高速度: 1,100 km/h
• - 航続力: 2,670 km
• - 推力重量比: 0.19

このように、XF10Fジャガーは一時期は革新的な戦闘機として期待されましたが、様々な技術的・運用上の課題から実戦には至りませんでした。

もう一度検索