XP-54 (航空機)

XP-54 スウースグース

XP-54 スウースグース（Vultee XP-54 Swoose Goose）は、アメリカ合衆国のヴァルティー社によって開発された試作戦闘機です。この機体は、アメリカ陸軍航空隊の要求に応じて設計され、非常に特異な形状を持つことで知られています。具体的には、単発の推進式レシプロエンジンを胴体の後部に配置し、双ブーム方式の尾翼が特徴的です。このデザインは、他の多くの戦闘機とは一線を画しています。

開発経緯と特徴

1939年、アメリカ陸軍航空隊は、新たな戦闘機の開発を目指して周回計画（Circular Proposal）R40Cを策定し、各航空機メーカーに仕様を提示しました。その中で、ヴァルティー社は試作契約を獲得し、XP-54の開発を開始しました。航空機の設計は、単発の迎撃機という独自の方向性を持ち、胴体後部に配置されたプロペラが推進力を生み出す形状となっています。

さらに、この機体は当初、最大速度を821km/hと見込んで、プラット＆ウィトニー社が開発中のエンジンX-1800-A4Gを搭載する計画でした。しかし事情によりこのエンジンの開発が中止されたため、代わりにライカミング社製のXH-2470エンジンに切り替えざるを得ませんでした。これに伴い、機体の設計も大きく変更され、高高度迎撃機としての要素が強化されました。

特に注目すべき点は、乗員の搭乗システムです。パイロットは胴体の下から降りてくる座席に乗り込み、さらに緊急時にはその座席ごと射出する方式が採用されています。この革新的な機構は、他の戦闘機とは異なる特徴であり、操縦席へのアクセスを簡便化すると同時に安全性を高めることを意図していました。また、武装を持つ機首は+3°から-6°の範囲で可動可能な設計になっており、攻撃能力の向上に寄与しています。

試作とその結果

XP-54の初飛行は1943年の1月15日に行われましたが、初飛行はプロペラの不調から30分足らずで終了しました。その後、さらなるテストが続いたものの、ライカミング社のエンジンには多くのトラブルが発生し、最終的には計画された出力に達することができませんでした。結果として、最高速度は612km/hにとどまってしまいました。また、試作2号機も改良されたターボ過給器を搭載していたものの、エンジンの不調が続いたため、僅か1回の飛行で工場に戻されることになりました。

その後、ライカミングXH-2470エンジンの開発中止が決まったことで、XP-54の開発計画は自然消滅の運命をたどります。そして強力なライトR-2160トーネードエンジンを搭載する計画にXP-68トーネードの名称が与えられるも、同様にエンジン開発が滞り、計画は中止されました。

現存機体と登場作品

興味深いことに、XP-54は第二次世界大戦時の単発戦闘機の中でも特に全長が長かったため、話題にされました。しかし、現在では確認されている現存機体はありません。

また、XP-54はゲーム『鋼鉄の咆哮 ウォーシップコマンダー』に登場するアメリカ型の航空機としても知られています。このゲーム内でXP-54は、史実通りの37mm機関砲を搭載しています。

XP-54は、そのユニークなデザインと革新的な試みから、航空機の歴史に一時的ではありますが、確固たる印象を残しました。

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