XP-56 (航空機)

XP-56 ブラックバレット（Northrop XP-56 Black Bullet）

ノースロップ社が開発したXP-56 ブラックバレットは、その独特な形状から無尾翼機の一種として知られるアメリカの試作戦闘機です。この機体は、1939年にアメリカ陸軍航空隊が提示した迎撃機の仕様に基づいて開発が始まりました。XP-56は、特に推進式レシプロエンジンを胴体後部に配置し、二重反転プロペラを使うという革新的なデザインを採用しています。しかし、試作機は2機しか製造されることなく、いずれも安定性不足や性能の課題を抱えていたため、開発は中止となりました。

概要

XP-56の開発は、陸軍航空隊がレシプロ機の性能の限界を超えるために立ち上げた周回計画（Circular Proposal）R40Cの一環として行われました。このプランには、ヴァルティー社のXP-54やカーティス社のXP-55も参加していましたが、ノースロップ社はこの契約を獲得し、独自の無尾翼式機体の研究を継続しました。

当初予定されていたエンジンは、P&W X-1800という2,200馬力のモデルでしたが、その開発が中止されたため、代わりに空冷星型のR-2800エンジン（2,000馬力）が搭載されることになりました。この変更により、機体の胴体は再設計され、結果的に機体重量が増加し、飛行性能にも悪影響を及ぼしました。

さらに、XP-56では主翼の外側を下方に折り曲げることで翼端失速を遅らせようとした工夫が施され、垂直尾翼は機体後部に上下に取り付けられました。

初号機の完成は1943年4月に達しましたが、飛行モデルによる試験が行われる過程で垂直尾翼の改修が行われたため、初飛行は1943年9月にずれ込みました。1号機は滑走中に左主車輪がパンクして大破、廃棄されることになりました。これにより、2号機の初飛行は1944年3月まで延期されました。

2号機では、垂直尾翼の面積を拡大し、主翼の形状を変更することで安定性の向上を図りましたが、操縦性の悪さやエンジンの冷却不足などが依然として問題でした。約10回の飛行テストの後、1944年5月には開発計画が中止されました。

諸元

試作1号機

• - 全長: 8.38 m
• - 全高: 3.35 m
• - 全幅: 12.95 m
• - 翼面積: 28.52 m²
• - 自重: 3,946 kg
• - 全備重量: 5,148 kg
• - エンジン: P&W R-2800-29 空冷星型18気筒（2,000 hp）
• - 最大速度: 748 km/h
• - 航続距離: 724 km
• - 実用上昇限度: 10,058 m
• - 乗員: 1名
• - 武装: 12.7mm機関銃 × 4、20mm機関砲 × 2

試作2号機

• - 全長: 8.38 m
• - 全高: 3.38 m
• - 全幅: 12.96 m
• - 翼面積: 28.52 m²
• - 翼面荷重: 181 kg/m²
• - 自重: 3,955 kg
• - 全備重量: 5,159 kg
• - エンジン: P&W R-2800-29（離昇2,000 hp）
• - 最高速度: 749 km/h
• - 航続距離: 1,063 km
• - 実用上昇限度: 10,061 m
• - 乗員: 1名
• - 武装: 12.7mm機関銃 × 4、20mm機関砲 × 2

現存する機体

製造されたXP-56は2機のみですが、1号機は試験中に大破し、2号機は現在、国立航空宇宙博物館で保管されています。展示されてはいませんが、その歴史的重要性が評価されています。

このように、XP-56 ブラックバレットはアメリカの航空技術の進化を示す興味深い試作機であると同時に、戦闘機開発の厳しさを物語る存在でもあります。

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