YELLOW BLOOD

日本のロックシーンにおいて確固たる存在感を放つバンド、ARBが1984年9月21日にリリースした通算7枚目のスタジオ・アルバムが『YELLOW BLOOD』です。

このアルバムは、バンドにとって重要な転換期に制作されました。メンバーとして、ギタリストの斉藤光浩とベーシストの岡部滋が初めてレコーディングに参加しており、彼らの新しい才能がその後のARBサウンドに新たな可能性をもたらしています。彼らの加入は、バンドの音楽性や表現の幅をさらに広げる契機となりました。

また、『YELLOW BLOOD』の制作には、海外の著名なミュージシャンも関わっています。ベーシストの岡部滋が正式にバンドに加わる以前、ARBでベーシストを務めていた時期があったザ・ストラングラーズのジャン＝ジャック・バーネルが、特定の楽曲でベースを演奏しています。バーネルの参加は、「ONE WAY TRIP」と「戦いぬくんだ! （FIGHT IT OUT!）」という2曲で確認できます。ストラングラーズで培われた彼独自のグルーヴやベースラインは、これらの楽曲に個性的な彩りを加えており、アルバム全体の聴きどころの一つとなっています。日本のバンドとイギリスの著名なミュージシャンとのコラボレーションは、当時の音楽シーンにおいても注目すべき出来事でした。

アルバムに収められた楽曲は、すべてボーカルの石橋凌が作詞を手がけています。彼の言葉は、常に社会や人間の内面に深く切り込む鋭さを持ち、多くのリスナーに共感を呼んでいます。作曲は、主に新加入のギタリストである斉藤光浩が担当していますが、「彼女はチャーミング」「ダン・ダン・ダン」「YELLOW BLOOD」「飲まずにいられない」といった楽曲では、石橋凌自身が作曲者として名を連ねています。異なるソングライターの存在が、アルバムに多様な音楽的アプローチをもたらしています。そして、編曲はARB全体で行われており、メンバーそれぞれの持ち味が融合したバンドサウンドが確立されています。

収録曲には、「TOKYO PRISON」「Let's Revolution」「HIT MAN」「HOLIDAY」など、エネルギー溢れる楽曲が並びます。これらの楽曲は、当時の社会情勢や個人的な葛藤、あるいは日常の一コマを描き出しながらも、ARBらしい力強さとメッセージ性を失っていません。タイトル曲でもある「YELLOW BLOOD」も、石橋凌作曲の楽曲としてアルバムの中心を成す重要なトラックです。新体制となったバンドの演奏力は円熟味を増し、各楽曲のアレンジメントもより洗練されています。

『YELLOW BLOOD』は、新しいメンバーを迎え入れ、サウンド面での進化を遂げたARBの意欲作であり、同時に彼らの核となる反骨精神や表現者としての姿勢が揺るぎないものであることを示した作品です。斉藤光浩と岡部滋という新しい才能の加入、そしてジャン＝ジャック・バーネルという世界的ミュージシャンの参加が、このアルバムを特別なものにしています。日本のロックシーンにおけるARBの歴史において、このアルバムは間違いなく重要な節目の一つとして位置づけられるべき作品と言えるでしょう。

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