YF-20

YF-20系ロケットエンジン

YF-20系エンジンは、中国が宇宙開発初期から現在に至るまで、その主力ロケットの推進システムとして広く採用してきた液体燃料ロケットエンジンファミリーです。これらのエンジンは、非対称ジメチルヒドラジン（UDMH）を燃料、四酸化二窒素（N2O4）を酸化剤とする自己着火性推進剤を使用し、ガス発生器サイクルで動作します。高い信頼性と実績を持ち、多くの長征ロケットシリーズの推進を担ってきました。

エンジンの基本構成と派生型

YF-20を基本として、用途や性能向上に応じた様々な派生型が存在します。

YF-20: このファミリーの原型となるコアエンジンです。当初、風暴1号や長征2号Aなどの初期型ロケットに搭載され飛行しました。
YF-20A～YF-20E: YF-20の改良型として開発されたコアエンジン群です。YF-20B以降のモデルは、単体で補助ロケット用のエンジンとしても使用されるようになりました。
YF-22: 高高度やロケットの上段での使用に特化して設計された派生型です。真空環境での性能を最適化するため、ノズルが延長され、膨張比が拡大されています。初期は風暴1号の第2段としてバーニアなしで使用されましたが、後にYF-24推進モジュールの一部としてYF-23バーニア推進器と組み合わせて長征2号Aなどに搭載されました。
YF-22A～YF-22E: YF-22の改良型として、上段用エンジンとして使用されます。
YF-23: YF-22系エンジンと組み合わせて使用されるバーニア推進器です。主に推力方向制御や姿勢制御の役割を担います。
YF-25: 補助ロケット専用に開発されたエンジンです。

推進モジュールの構成

YF-20系エンジンは、単体で用いられる場合もありますが（主に補助ロケット）、多くは複数基を束ねたモジュールとして使用されます。これにより、要求される総推力や機能に応じた柔軟なシステム構築が可能となっています。

第1段用モジュール

ロケットの第1段やブースターとして使用される推進モジュールは、主にYF-20系のコアエンジンを複数基集めた構成となっています。

YF-21: YF-20エンジン4基で構成されるモジュールです。風暴1号や長征2号Aの初期型に搭載されました。
YF-21A: YF-20Aエンジン4基で構成される改良型モジュールです。
YF-21B (DaFY6-2): YF-20Bエンジン4基で構成され、初期型に比べて推力が約7%増強された改良型モジュールです。
YF-21C: YF-20Cエンジン4基で構成される改良型モジュールです。
YF-21D: YF-20Dエンジン4基で構成される改良型モジュールです。
YF-21E: YF-20Eエンジン4基で構成される改良型モジュールです。

第2段用モジュール

ロケットの第2段として使用される推進モジュールは、YF-22系の上段用エンジンとYF-23系のバーニア推進器を組み合わせて構成されます。

YF-24: YF-22上段用エンジン1基とYF-23バーニア推進器で構成されるモジュールです。長征2号Aで初めて飛行しました。
YF-24A: YF-22A上段用エンジン1基とYF-23Aバーニアで構成されるモジュールです。
YF-24B: YF-22B上段用エンジン1基とYF-23Bバーニアで構成されるモジュールです。
YF-24C: YF-22C上段用エンジン1基とYF-23Cバーニアで構成されるモジュールです。
YF-24D: YF-22D上段用エンジン1基とYF-23Dバーニアで構成されるモジュールです。
YF-24E: YF-22E上段用エンジン1基とYF-23Eバーニアで構成されるモジュールです。

使用実績

YF-20系エンジンとそのモジュールは、中国の基幹ロケットである長征シリーズ、特に長征2号、長征3号、長征4号の各ファミリーにおいて、第1段や第2段の主推進器として、また補助ロケットエンジンとして幅広く使用されてきました。その高い信頼性は、中国の宇宙開発において多くの成功を支えています。

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