YF-77

YF-77ロケットエンジン

YF-77は、中華人民共和国が開発した強力な液体燃料ロケットエンジンです。別名YF-50tとも呼ばれ、液体水素と液体酸素を推進剤として使用します。このエンジンは、中国の次世代大型ロケットである長征5号の第1段に使用される主要な推進機関として設計されました。

開発経緯

YF-77エンジンの開発は2000年代初頭に始まりました。開発主体は、中国航天科技集団公司(CAST)傘下の航天推進技術研究院(AALPT)（液体推進航空技術アカデミーとしても知られる）です。設計は北京の航空宇宙推進研究所が担当し、[中国国家航天局]の監督のもと進められました。本エンジンの開発にあたっては、先行するYF-73やYF-75といった液体水素/酸素エンジンの経験が活かされています。特にYF-75と比較すると、推力は約9倍、燃焼室圧力も約2.7倍と、大幅な性能向上が図られました。YF-77は、中国の長期的な宇宙開発計画における重要な要素として位置づけられ、2005年からは各種試験が本格化しました。2007年半ばには地上燃焼試験に成功。2013年9月までには、合計12基の試験機を用いて70回の燃焼試験が実施され、累計24,000秒の運転時間を達成しています。

技術的特徴

YF-77は、液体水素と液体酸素を推進剤として使用するガス発生器サイクルの極低温エンジンです。推進剤の混合比は、酸素1に対して水素5の割合で燃焼されます。長征5号の第1段では、YF-77エンジンが2基搭載される構成が採用されており、合計で真空環境において140トンの強力な推力を発生します（1基あたり70トン）。長征5号第1段用のエンジンとしては、コスト効率が高く、高い信頼性と性能を同時に実現することが目標とされました。設計者たちは、信頼性や製造の簡便性などを考慮し、1基の大型エンジンではなく、2基の独立したエンジンで必要な推力を賄う構成を選択しました。エンジンの燃焼室は再生冷却システムによって効率的に冷却されますが、ノズル部分は非冷却となっています。燃焼室内部の圧力は102バールに達し、ノズルの膨張比は49です。また、推進剤タンクを加圧するために、エンジンには熱交換器が備えられており、水素ガスと酸素ガスを生成して利用します。真空環境での比推力は430秒という高い値を達成しており、これは燃料効率の良さを示しています。構造的には、YF-77は本質的に単一のエンジンとして設計されていますが、長征5号では2基が並列に配置されます。エンジンの全長は約4.2メートル、全幅は約5メートル、重量は約2.7トンです。最大燃焼時間は520秒と長く、高い信頼性（目標値0.9999）を目指して開発されました。推力方向の制御は、ジンバル機構を介して2軸方向に変更可能であり、機体の姿勢制御に寄与します。

中国宇宙開発における位置づけ

YF-77エンジンは、開発時点で中国が開発したガス発生器サイクルの液体水素/酸素エンジンの中で最もパワフルなエンジンでした。その開発は、中国が独自に大型ペイロードを軌道へ投入する能力を獲得する上で不可欠なステップであり、長征5号ロケットと共に、有人宇宙飛行計画や月・火星探査計画など、中国の野心的な宇宙開発計画を支える基盤技術となっています。長征5号の初打ち上げは当初2015年に予定されており、このエンジンの実証が待たれていました。

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