YJ-7 (ミサイル)

YJ-7ミサイル

YJ-7（中国語: 鷹撃-7、ピンイン: Ying-Ji-7）は、中華人民共和国が開発した多目的ミサイルシステムです。本ミサイルは、主に水上艦艇への攻撃を目的とした対艦ミサイルとして設計されましたが、地上発射型として地対艦攻撃、あるいは航空機やヘリコプターからの空対地攻撃にも使用できる柔軟性を持っています。

開発と特徴

YJ-7の開発プロジェクトは、中国の主要なミサイル開発機関である中国航天科工集団公司（CASIC）傘下の中国海鷹電気技術学院（CHETA）によって手掛けられました。YJ-7の存在が初めて公にされたのは、1998年に開催された珠海エア・ショーでのことです。

国際市場向けの輸出型には「C-701」という名称が用いられ、誘導方式の異なる複数の型が存在します。

C-701T: 光学画像（TV）誘導方式を採用しています。ミサイル搭載カメラからの映像を基に目標を追尾します。視界が良い状況下での精密攻撃に適します。
C-701AR: アクティブ・レーダー・ホーミング（ARH）誘導方式を採用しています。内蔵レーダーで目標を探知・追尾するため、比較的悪天候下でも運用可能です。

YJ-7は、同学院が開発した他の対艦ミサイル、例えばYJ-8シリーズと比較して大幅に小型であることが特徴です。この小型化は、多様な発射プラットフォームへの搭載を容易にしています。主翼を折り畳める設計により、発射機への効率的な収納も可能です。発射プラットフォームとしては、陸上移動発射機、各種ヘリコプター、固定翼航空機などが想定されています。

実戦での運用

C-701として輸出されたYJ-7は、複数の国で運用実績があります。特にイランにおいては、艦艇発射型および陸上発射型が導入され、「Kowsar」（資料によってはKosar）という呼称で知られています。イランは、C-701に加えて、より大型のC-802対艦ミサイル（イラン名：Noor）のライセンス生産も行っています。

YJ-7が最も広く知られることになった事例は、2006年7月14日に発生しました。レバノンの武装組織ヒズボラによって使用された陸上発射型のミサイル1発が、イスラエル海軍のサール5型コルベット「Hanit」に命中したのです。この攻撃により、イスラエル側に乗組員4名の死亡者が出ました。使用された具体的なミサイルがC-701（Kowsar）であったのか、あるいはC-802（Noor）であったのかについては、情報源によって見解が分かれていますが、この事案は、比較的小型のミサイルシステムが現代の軍艦に対しても無視できない脅威となり得ることを示しました。

発展と関連システム

YJ-7の開発経験を基に、中国ではより小型の対艦ミサイル「YJ-9」が後継として開発されました。YJ-9は2013年頃にその存在が明らかになっています。
YJ-9は小型化に加え、高度な誘導能力を有するとされます。例えば、発射プラットフォームからの指令に基づき複数の目標から優先順位を付けて攻撃する能力や、発射後にデータリンクを通じて目標を変更する能力が報じられています。

中国が開発した別の小型ミサイルであるTL-10は、YJ-7やYJ-9と類似のサイズ・用途を持ちますが、外見上の違いとしてカナード翼（前翼）の位置があります。TL-10の前翼が胴体中央部に近い位置にあるのに対し、YJ-7およびYJ-9の前翼は尾部寄りに配置されています。

国際的な比較対象として、イギリスが開発したシースクア対艦ミサイルがYJ-7と同級機と見なされることがあります。シースクアもまた、ヘリコプターなどからの運用を主眼とした小型対艦ミサイルです。

YJ-7およびその発展型は、中国の防衛力において、特に沿岸部や小型艦艇、航空部隊の対艦・対地攻撃能力を担う重要なミサイルシステムの一つと言えます。

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関連項目

* シースクア

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