Zボーイズ

Zボーイズ

Zボーイズ（ゼット・ボーイズ、Z Boys）とは、1970年代のプロボクシング軽量級において、一時代を築いた二人のメキシコ人強打者、カルロス・サラテとアルフォンソ・サモラのコンビに付けられたニックネームです。

二人はともに、メキシコボクシング界で名高い指導者アルトゥーロ・エルナンデスの門下で基礎を学びました。彼らの最大の特徴は、軽量級であるバンタム級にもかかわらず、圧倒的に高いノックアウト（KO）率を誇り、そのスペクタクルなファイトスタイルで絶大な人気を獲得した点にあります。そのニックネームは、それぞれの姓である「Zarate」と「Zamora」の頭文字「Z」に由来しています。同時期に世界バンタム級の頂点に立ち、1970年代のボクシング界における「黄金のバンタム級」と呼ばれる時代を鮮やかに彩りました。

当初は同じ師の下で研鑽を積む存在でしたが、後にサモラが、父親であるアルフォンソ・サモラ・シニアとトレーナーのエルナンデスとの間で生じた金銭的な問題を理由にエルナンデス門下を離れることになります。これにより、本来ならば実現しなかったかもしれない、二人の「闘わざるライバル」の直接対決が現実のものとなりました。

主な戦績と経歴

カルロス・サラテ（Carlos Zárate Serna、1951年5月23日生）

アマチュア時代には36戦33勝（30KO、RSC）3敗の成績を残し、1969年にはメキシコ・ゴールデン・グローブで優勝。
1970年2月2日にプロデビュー。
1976年5月8日、WBC世界バンタム級タイトルを獲得。特筆すべきは、彼の防衛戦における驚異的なKO率です。9度の防衛を果たしましたが、その全てがノックアウトによるものでした。
1988年2月29日に現役を引退。
1994年には、その功績が認められ国際ボクシング名誉の殿堂博物館に殿堂入りを果たしています。
プロキャリア通算成績：70戦66勝（63KO）4敗。

アルフォンソ・サモラ（Alfonso Zamora Quiroz、1954年2月9日生）

アマチュア時代は55戦54勝（45KO、RSC）1敗とほぼ完璧な記録を残し、1972年のミュンヘンオリンピックではバンタム級で銀メダルを獲得しています。
1973年4月16日にプロデビュー。
1975年3月14日、WBA世界バンタム級タイトルを獲得。彼もまた強打者であり、5度の防衛全てをノックアウトで飾っています。
1980年9月19日に現役を引退。
2005年に世界ボクシング殿堂に殿堂入り。
プロキャリア通算成績：38戦33勝（32KO）5敗。

伝説の対決：Zボーイズ激突

1977年4月23日、アメリカ合衆国カリフォルニア州イングルウッドのイングルウッド・フォーラムにて、ファンが待ち望んだ両者の対戦が実現しました。この試合は「The Battle of the Z Boys」と銘打たれましたが、WBA・WBC双方が特別な理由を示すことなく、世界王座統一戦とは認められず、異例のノンタイトル10回戦として行われました。

この試合に臨むにあたり、WBA王者サモラはプロデビュー以来29戦全勝、しかも全てがノックアウト勝利という完璧な記録を保持していました。対するWBC王者サラテも、45戦全勝、うち44KOという、これまた驚異的な戦績を収めており、両者ともに無敗のまま世界王座に君臨していました。高いKO率を誇る無敗の世界王者同士が雌雄を決するとあって、世界のボクシングファンの注目は最高潮に達しました。

試合開始のゴングが鳴ると、両者は予想通り激しいパンチの応酬を展開。1ラウンド、2ラウンドと互角の打ち合いを繰り広げ、会場を沸かせました。しかし、ラウンドが進むにつれて、パンチの精度と防御技術で優るサラテが徐々に試合の主導権を握り始めます。3ラウンド終了間際、サラテの正確なコンビネーションパンチを浴びたサモラが最初のダウンを喫します。辛うじて立ち上がったサモラでしたが、ダメージが残る中、さらに連打を浴びてしまいます。このラウンドはゴングに救われる形となりましたが、続く4ラウンドが始まると同時に、サラテの猛攻を受け再びキャンバスに倒れました。完全に一方的な展開となった後、サモラはさらに3度目のダウンを奪われ、これを見たセコンドを務めていたサモラ・シニアが戦意喪失と判断しタオルを投入。試合は4ラウンドTKOでカルロス・サラテの勝利となりました。これにより、アルフォンソ・サモラのプロデビュー以来30戦目でのパーフェクトレコードはストップすることになります。

Zボーイズは、短い期間ながらも互いに刺激し合い、軽量級ボクシングの可能性を示すとともに、その強打とカリスマ性でボクシング史に確固たる足跡を残しました。

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