ZEN drive

ZEN drive：日本の自動運転技術を象徴する事例

福井県永平寺町を舞台に、自動運転技術の実用化に向けた挑戦が続けられています。その象徴と言えるのが、自動運転車「ZEN drive」です。本記事では、その歴史から運行状況、そして社会へのインパクトまでを多角的に解説します。

始まり：実証実験からの進化

「ZEN drive」のルーツは、2002年に廃線となった京福電気鉄道永平寺線の跡地に整備された遊歩道「永平寺参ろーど」にあります。2017年、この遊歩道を舞台に、産業技術総合研究所主導による自動運転プロジェクトの実証実験が開始されました。

初期の実験では、パナソニックとの共同プロジェクトとして、1.4km区間での自動走行実験を実施。その後、経済産業省や国土交通省なども加わり、世界初の公道における複数車両の遠隔操作実験も成功させました。2019年には、10台の自動運転車による地元住民や観光客向けの無料送迎サービスを実施。延べ2400人以上が乗車し、自動運転技術の社会実装に向けた大きな一歩となりました。

営業開始とレベル4運転の認可

2020年12月、実証実験を経て「ZEN drive」は正式な営業を開始しました。名称は公募で決定され、「先端技術と地域文化の調和」という願いが込められています。当初はレベル2運転でしたが、段階的にレベル3、そして2023年5月には、日本で初めて公道でのレベル4運転が認可されました。これは、自動運転技術の進歩を象徴する大きな出来事でした。

しかし、同年10月には、車両が子供用自転車と接触する事故が発生。運行は一時中断されましたが、事故原因の究明と安全対策の強化を経て、2024年3月、運行を再開しました。この事故は、自動運転技術の課題と安全性の重要性を改めて浮き彫りにしました。

運行状況と今後の展望

「ZEN drive」は、土日祝日のみ、永平寺参ろーどの2km区間を約10分で運行しています。ヤマハ発動機の電動カートをベースとした車両は、路面に埋設された電磁誘導線とRFIDを利用して走行します。運賃は大人100円、中学生以下50円と、地域住民にも優しい価格設定となっています。

「ZEN drive」の運営会社であるZENコネクトは、2022年度は赤字でしたが、2023年度には黒字転換を果たしました。これは、自動運転技術のビジネスとしての可能性を示唆しています。

社会へのインパクト

「ZEN drive」は、単なる自動運転サービスにとどまりません。地方の過疎化が進む地域において、観光客誘致や地域活性化への貢献が期待されています。また、自動運転技術の社会実装に向けた成功事例として、国内外から注目を集め、今後の技術開発や政策決定にも大きな影響を与えるでしょう。

自動運転技術の進歩は、私たちの生活を大きく変える可能性を秘めています。永平寺町の「ZEN drive」は、その可能性を現実のものにしようとする、先駆的な取り組みと言えるでしょう。今後の発展に期待が高まります。

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