ZUN (ゲームクリエイター)

ZUN (太田順也) - 『東方Project』を生み出した孤高のゲームクリエイター

ZUN（ずん、本名：太田順也、1977年3月18日 - ）は、日本のゲーム開発者、プログラマ、作曲家、脚本家、小説家、漫画原作者、イラストレーターとして多岐にわたる才能を発揮しています。彼は、同人ゲーム・音楽制作サークル「上海アリス幻樂団」を主宰し、代表作である『東方Project』シリーズにおいて、シナリオ、プログラミング、キャラクターデザイン、サウンド制作など、ゲーム開発に必要なほとんどの作業を個人で担当しています。

生い立ちと初期の活動

ZUNは長野県北安曇郡白馬村で生まれ、幼少期からゲームと虫が好きでした。喫茶店を経営する家庭環境から、アーケードゲームに親しみ、ゲーム制作への関心を深めます。小学生の頃からキーボードやトランペットを演奏し、中学生時代には作曲を開始。また、中学・高校時代には『デザエモン』というソフトを用いてシューティングゲームを制作していました。東京電機大学に進学後は、独学でプログラミングを学び、ゲーム制作サークル「Amusement Makers」に参加しました。

PC-98時代 - 『東方Project』の誕生

大学在学中の1996年、ZUNは『東方Project』の第一作である『東方靈異伝』を制作し、大学の文化祭で発表しました。その後、1997年から1998年にかけて、『東方封魔録』、『東方夢時空』、『東方幻想郷』、『東方怪綺談』を矢継ぎ早にリリース。この時期、ZUNは大学にほとんど通わず、集中的にゲーム制作に没頭していました。当初、『東方幻想郷』をシリーズの完結作とする予定でしたが、制作終盤に新たな曲のアイデアが浮かび、『東方怪綺談』を制作することになりました。その後、「Amusement Makers」の一員として、後輩が制作した西方Projectの『秋霜玉』『稀翁玉』などのシューティングゲームに作曲者として参加しました。

卒業後の活動 - 商業ゲーム開発からインディーへ

大学卒業後、ZUNはタイトーに入社し、ゲーム開発者として勤務しました。タイトー在籍時には、『ラクガキ王国』というゲームに『東方Project』の主人公である博麗霊夢をモチーフにした隠しキャラクター「ハクレイのミコ」が登場しています。2007年にタイトーを退職し、現在は個人でゲーム制作を行っています。

ZUNは、既存のゲームに満足できなかったことから、自らゲームを制作する道を選びました。スウェーデンの雑誌のインタビューでは、「ファンが全ていなくなっても、好きなゲームを作り続けることができれば幸せだ」と語っています。彼は、Microsoft Visual Studio、Adobe Photoshop、Cubase SXなどのツールを用いて『東方Project』のゲームを開発しています。

Windows時代 - 二次創作文化の隆盛

2002年6月、ZUNの個人ホームページ「東方幻想空間 博麗神社」は「上海アリス幻樂団」と改称されました。同年8月には、『東方Project』の第6弾『東方紅魔郷』をリリースし、シリーズを再始動。同時に音楽CD『蓬莱人形』を発表し、同人音楽活動も開始しました。『東方紅魔郷』は、Windowsプラットフォームでの最初の『東方Project』作品であり、これを機に『東方Project』は、原作ゲームだけでなく二次創作同人活動の対象としても人気を集めました。2003年のコミックマーケットではわずか7つだったファンサークルが、2008年には885にまで増加しています。ZUNは、『東方Project』に関する二次創作についてガイドラインを定め、その範囲内での自由な二次創作活動を公認しています。

その後も、2003年8月のC64で第7作『東方妖々夢』、2004年8月のC66で第8作『東方永夜抄』を発表。2005年と2007年の夏には、それぞれ第9作『東方花映塚』と第10作『東方風神録』をリリースしました。2006年末にニコニコ動画が登場したことで、『東方Project』の音楽や動画が手軽に楽しめるようになり、人気はさらに拡大しました。

近年では、『東方Project』の同人ゲームタイトルのリリースを継続する傍ら、商業誌において小説家・漫画原作者としても活動しています。小説作品としては2004年以来『東方香霖堂 〜 Curiosities of Lotus Asia.』を発表しており、漫画原作者としては2005年から連載された『東方三月精』以降、複数の著作があります。

人物像

「ZUN」というクリエイターネームは、アーケードゲームのハイスコア入力画面などで使用する3文字のスコアネームに由来します。また、『東方Project』のファンからは、作品世界の中心舞台である「博麗神社」の主という意味から、「神主」「博麗神主」という愛称で親しまれています。「博麗神主」は、ZUNが自身のTwitterアカウントで使用している名前でもあります。

ゲーム制作においては、郷里である長野県を中心とした神話、伝説、民俗を引用することが多く、『東方風神録』の制作には2年の歳月を費やしましたが、これは長野県内の神社への取材に時間をかけたためです。ZUNは民俗学について、「田舎で育ったので、民話に触れる機会が多く、子供の頃からそういうものが好きだった」と語っています。

私生活では、2012年に結婚。大の酒好きとしても知られ、ブログには酒に関する話題が多く登場します。人生観について問われた際には、「悲観的に考えない方がいい。人生は一度きりだから、何でもやってみればいい」と答えています。

二次創作への想い

ZUNは二次創作について、「感謝しかない」と語り、自身の作品を超えた二次創作が登場することを喜びます。彼は、ファンによる二次創作活動を心から応援しています。

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