Zola ゾラ

Zola ゾラ



2020年に制作されたアメリカのドラマ映画で、原題は『Zola』。監督はジャニクザ・ブラヴォーが務め、主演にはテイラー・ペイジとライリー・キーオが起用されました。本作は、2015年にアザイア・キングという人物が自身の体験談をTwitterに投稿した一連のツイートと、それについて『ローリング・ストーン』誌のデヴィッド・クシュナーが取材した記事「Zola Tells All: The Real Story Behind the Greatest Stripper Saga Ever Tweeted」を原作としています。

物語の舞台はデトロイト。主人公のアザイア・キング、通称ゾラ(演:テイラー・ペイジ)は、昼間はフーターズでウェイトレスとして働き、夜はストリッパーとして生計を立てていました。ある日、ゾラが働く店に、どこか風変わりな雰囲気を持つ女性、ステファニー(演:ライリー・キーオ)がやってきます。ステファニーもまたストリッパーであり、二人は意気投合し、すぐに打ち解けました。翌日、ステファニーから「フロリダに行かないか?あっちのクラブなら短時間で大金が稼げる」という誘いを受けたゾラは、軽い気持ちでその話に乗ることにします。この旅には、ステファニーの不可解なルームメイトである「X」(演:コールマン・ドミンゴ)と、頼りなさそうな彼女の恋人デレク(演:ニコラス・ブラウン)も同行することになります。

しかし、気楽な旅行気分で出発したゾラは、すぐに自分が恐ろしい計画に巻き込まれたことを知ります。実は、同行者の「X」はステファニーのポン引きであり、ゾラにも売春をさせて利益を得ようと企んでいたのです。ゾラはすぐにでも逃げ出そうとしますが、ステファニーが一人あたりたった150ドルで客を取っていることを知り、激しい怒りを感じます。「女性が自らを売り渡す価値がそんなに低いわけがない」と考えたゾラは、ステファニーに知恵を貸し、彼女が一晩で8000ドル以上を稼げるように手助けします。しかし、この「X」のビジネスへの介入が、かえってゾラが危険な状況から脱出する機会を失わせる結果となってしまうのです。

本作の製作は、原作となったTwitter投稿が発端です。2015年10月、アザイア・キングが自身の体験を148件ものツイートで投稿した内容は、瞬く間にインターネット上で拡散され、ミッシー・エリオットソランジュエイヴァ・デュヴァーネイといった著名人も含め、多くの人々の注目を集めました。同年11月には、『ローリング・ストーン』誌がキング本人や関係者に取材を行い、記事を掲載。ツイートには一部誇張が含まれるものの、物語の大筋は事実に基づいていることが確認されました。

このセンセーショナルな体験談の映画化企画はすぐに持ち上がり、2016年2月にはジェームズ・フランコが監督に決定したと報じられました。製作は2018年2月に開始される予定でしたが、フランコに対する過去のセクシュアル・ハラスメント告発を受けて企画は一時頓挫します。その後、2018年6月には新たにジャニクザ・ブラヴォーが監督に就任し、同年10月から11月にかけて主要キャストであるテイラー・ペイジ、ライリー・キーオ、ニコラス・ブラウン、コールマン・ドミンゴ、ジェイソン・ミッチェル、アリエル・スタッチェルらの出演が決定しました。

主演のテイラー・ペイジは、役作りのためにポールダンスの集中的な訓練を受けたほか、身元を隠して実際にクラブでストリッパーとして働いたというエピソードが伝えられています。また、劇中でテイラー・ペイジ演じるゾラがライリー・キーオ演じるステファニーよりも多くの肌を露出しているのは、ストリップの舞台上ですら、黒人女性が白人女性よりも努力を強いられ、より身体を露出しなければならないという、現実社会における差別的な状況を表現するためであるとされています。

音楽はミカ・レヴィが担当し、2021年7月2日にはサウンドトラックがリリースされました。公開については、2020年1月24日にサンダンス映画祭でプレミア上映され、批評家から高い評価を得ました。全米では2021年6月30日に1468館で封切られ、公開初週末に120万ドルの興行収入を記録し、週末ランキングで9位となりました。事前の予想には及びませんでしたが、その独特なストーリーと表現は大きな話題を呼びました。

批評家からの評価は非常に高く、映画批評集積サイトのRotten Tomatoesでは、204件のレビューに基づき批評家支持率88%、平均点7.6/10を獲得。「事実は小説よりも奇なり」と言われるTwitter上の物語の魅力を確かに捉え、ジャニクザ・ブラヴォーを「今後注目すべき映画監督」と評しています。Metacriticでも43件のレビューによる加重平均値が76/100となるなど、その斬新な映像表現やストーリーテリングが高く評価されています。

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