Async

アルバム『async』の概要

坂本龍一が2017年に発表したアルバム『async』は、彼のオリジナルアルバムとしては実に8年ぶりの新作です。この作品は、坂本自身が構想した「非同期な音楽」というテーマの下に制作されており、アルバム名も「asynchronization」の略から来ています。

制作の背景

本作は、彼が癌を克服した後に生まれた曲によって構成されています。元は「架空の映画のサウンドトラック」というコンセプトで制作を開始したものの、2014年に坂本が中咽頭癌と診断されたことを受け、一度すべてを作り直すことになりました。この新たな作品は、治療を乗り越えた坂本の音楽的探求の結晶と言えるでしょう。

音響技術の進化

また、本作は2010年代から普及しているハイレゾ再生環境に向け、これまでのデジタル機材を排除し、アナログ機材を中心としたシンプルな制作環境で仕上げられました。これにより、より温かみのある音質が追求されています。

アルバムの発表と反響

坂本は、2016年12月29日に公式サイトに「Ryuichi Sakamoto: SN/M比 50%」というメッセージを掲載。その後、特設サイトを立ち上げ、「あまりに好きすぎて、誰にも聴かせたくない」という思いを語り、事前の音源公開を行わない決断を明らかにしました。この特設サイトでは、坂本の音楽に親しむための「予習」や、著名人によるアルバムの予想など、様々なコンテンツが掲載されました。

アルバムのリリース直後、2017年3月31日には坂本のラジオ番組「RADIO SAKAMOTO」で特番が組まれ、「J-WAVE SPECIAL RADIO SAKAMOTO EXTRA 〜坂本龍一ニューアルバム『async』緊急生試聴会〜」としてアルバムの内容が公開されました。これにより、ファンは発売日に全作品をいち早く体験することができました。

特別イベントと展覧会

さらに、本作のリリースを祝して、2017年4月4日から5月28日までワタリウム美術館で「Ryuichi Sakamoto｜async 設置音楽展」が開催されました。この展覧会では、本作の5.1チャンネルサラウンドミックス版が、高谷史郎の映像とともに鑑賞できるフロアや、アピチャートポン・ウィーラセータクンによる短編映像が使用されるなど、多様な芸術表現が組み合わされていました。また、来場者は作品に対するコメントを寄せ、坂本本人による返答が本作の特設サイト上で公開されるなど、ファンとの交流が生まれました。

ライヴパフォーマンスと映画化

アルバムの収録曲を演奏するライヴもニューヨークで行われ、その模様は映画「坂本龍一 PERFORMANCE IN NEW YORK: async」として2018年に公開されました。これにより、さらなる注目を集めた本作は、同年の英『FACT』誌では「The 50 best albums of 2017」の1位に選ばれるなど、その評価は高まり続けています。

収録曲

アルバムには、以下のトラックが収録されています。
1. andata
2. disintegration
3. solari
4. ZURE
5. walker
6. stakra
7. ubi
8. fullmoon
9. async
10. tri
11. Life, Life
12. honj
13. ff
14. garden
15. water state 2 (アナログ盤のボーナストラック)

このように、『async』は坂本龍一のクリエイティブな挑戦を感じさせる作品であり、音楽だけでなく、映像や芸術とのコラボレーションを通じても、彼の独自の世界観を楽しむことができる素晴らしいアルバムとなっています。

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