Cpio

cpioとは

cpio（copy in and out）は、Unix系オペレーティングシステムで広く利用されているファイルアーカイバ・ユーティリティであり、同時にそのアーカイブ形式を指します。主にファイルのバックアップや配布に用いられ、tarコマンドと並びUnix系システムでは重要な存在です。

歴史

cpioは、もともと「Programmer's Workbench」（PWB/UNIX）という環境で、テープメディアのアーカイブプログラムとして開発されました。その後、ほとんど全てのUnix系OSに標準コンポーネントとして組み込まれるようになりました。コマンド名の由来は「copy in and out」という言葉が示す通り、cpioが標準入出力を利用してデータのコピー処理を行うことにあります。

cpioの特徴

- アーカイブ形式: cpioは、ファイルやディレクトリをストリーム形式で連続的にアーカイブに格納します。アーカイブファイルは、ファイルメタ情報（ファイル名、inode番号、所有者、パーミッション、タイムスタンプなど）を含むヘッダセクションと、ファイルデータから構成されます。
- 非圧縮: cpio自体には圧縮機能がないため、gzipなどの外部圧縮ツールと組み合わせて利用されることが一般的です。これにより、`.cpgz`や`.cpio.gz`といった拡張子を持つ圧縮アーカイブが作成されます。
- 柔軟な利用: cpioは、標準入力を介してファイルリストを受け取るため、`find`コマンドなど他のユーティリティと連携して利用されることが多いです。これにより、複雑なファイル操作を柔軟に行うことができます。

cpioの利用例

- RPMパッケージのアーカイブ形式: cpioは、RPMパッケージマネージャー（rpm）のアーカイブ形式として利用されています。
- Linuxカーネルの起動用RAMイメージ: Linuxカーネルの起動時に利用されるRAMイメージ（initramfs）のアーカイブ形式として、mkinitcpio（Arch Linux）やinitramfs-tools（Debian）などで用いられています。
- Appleのpaxインストーラ: Appleのpaxインストーラでも、アーカイブフォーマットとしてcpioが採用されています。
- ソフトウェア配布: かつて、オラクルはソフトウェアの配布にcpio形式のアーカイブを利用していました。

cpioの操作

アーカイブの作成

cpioでアーカイブを作成するには、`-o`オプションを指定してコピーアウト（copy-out）モードで起動します。この際、標準入力からファイルまたはディレクトリのパス名を読み込み、標準出力にアーカイブを書き出します。通常は、`find`コマンドでアーカイブ対象ファイルの一覧を作成し、それをcpioにパイプで渡します。

例：

bash
find . | cpio -o > archive.cpio

この例では、カレントディレクトリのすべてのファイルとディレクトリが、`archive.cpio`というアーカイブファイルに保存されます。

アーカイブの展開

cpioでアーカイブを展開するには、`-i`オプションを指定してコピーイン（copy-in）モードで起動します。この際、標準入力からアーカイブを読み込み、ファイルシステム上にファイルやディレクトリを復元します。

例：

bash
cpio -i < archive.cpio

アーカイブを展開する際に、必要に応じてディレクトリを作成する場合は、`-d`オプションを使用します。また、展開されるファイル名を表示するには、`-v`オプションを使用します。

例：

bash
cpio -idv < archive.cpio

アーカイブ内のファイルリスト表示

アーカイブを展開せずに、内容を確認する場合は、`-t`オプションを使用します。

例：

bash
cpio -it < archive.cpio

このコマンドは、アーカイブに含まれるファイルの一覧を標準出力に表示します。

ファイルのコピー

cpioは、`-p`オプションを指定してコピーパス（copy-pass）モードで起動すると、アーカイブを作成せずに、ディレクトリツリーを別の場所にコピーできます。このモードでは、標準入力からパス名を読み込み、指定された場所にファイルとディレクトリを再作成します。

例：

bash
find . | cpio -pdmvu new-path

この例では、カレントディレクトリのファイルとディレクトリが、`new-path`というディレクトリにコピーされます。`-m`オプションはパーミッションを保持し、`-d`オプションは必要に応じてディレクトリを作成し、`-u`オプションは既存のファイルを上書きします。

POSIX標準

cpio形式は、POSIX.1-1988で標準化されていますが、cpioユーティリティ自体は標準化されていません。POSIX標準では、cpioの代替としてpaxユーティリティが利用可能です。

実装

ほとんどのLinuxディストリビューションには、GNUプロジェクト版のcpioが含まれています。FreeBSDとmacOSでは、BSDライセンスのcpioとlibarchiveライブラリが利用されています。

まとめ

cpioは、Unix系システムで広く利用されるファイルアーカイバであり、その柔軟性と効率性から、現在でも重要な役割を果たしています。本記事では、cpioの基本的な操作方法と利用例について解説しました。これらの知識を活用して、ファイル管理の効率化に役立ててください。

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