PHARMACY

槇原敬之『PHARMACY』：アクシデントを乗り越え誕生した、バラエティ豊かな楽曲群

1994年10月25日、シンガーソングライター槇原敬之の5枚目のオリジナルアルバム『PHARMACY』がワーナーミュージック・ジャパンよりリリースされました。前作から約1年ぶりのリリースとなる本作は、CMソングにも起用された楽曲を含む、バラエティに富んだ楽曲群で構成されています。

特に注目すべきは、関西セルラー電話のCMソングとして使用された「HOME WORK」です。反町隆史さんと鶴田真由さんが出演したこのCMは当時大きな話題となり、楽曲への注目度を高める一助となりました。初回プレス盤のジャケットには、槇原敬之の口元をバンドエイドで覆った、独特の特殊加工が施されているのも特徴です。

アルバムのレコーディングは、プロデューサーの入院や機材故障など、数々のアクシデントに見舞われたとのこと。裏ジャケットに記載された英文注釈からは、制作過程の苦労がうかがえます。しかし、これらの困難を乗り越えて完成した『PHARMACY』は、槇原敬之の音楽的才能と、制作陣の粘り強さを示す、力強い作品と言えるでしょう。

収録されている楽曲は、インストゥルメンタル曲「INVITATION」から始まり、「HOME WORK」「DARLING」「2つの願い（VERSION Ⅱ）」など、バラエティ豊かな楽曲が並びます。「LONESOME COWBOY」「TWO MOONS」「SPY」「花水木」「OCTAVERS」「今年の冬」「恋はめんどくさい？」「東京DAYS」と、テンポやムードの異なる楽曲が、アルバム全体に彩りを加えています。

特に「花水木」は、後にA・cappellersによってシングルとしてカバーされるなど、幅広い世代に愛される楽曲となりました。また、「2つの願い」はシングルカットされ、複数のベストアルバムにも収録されており、アルバムの代表曲と言えるでしょう。「SPY」も、複数のベストアルバムに収録され、ライブでも頻繁に演奏される人気曲です。

演奏陣には、シンセサイザーオペレーターとして飯田高広氏、ギターに小倉博和氏、そして八木のぶお氏による口琴（マウストハーモニカ）の演奏など、豪華な面々が参加しています。「東京DAYS」には複数のコーラス隊が参加し、楽曲に厚みと深みを与えています。

『PHARMACY』は1998年11月26日に初回生産限定の紙ジャケット仕様で再発、2012年11月14日にはデジタルリマスター盤として再々発され、同年9月発売のCD-BOX『EARLY 7 ALBUMS』にも収録されました。これらの再発は、本作が長く愛され続けている証と言えるでしょう。

『PHARMACY』は、槇原敬之の音楽史における重要な1枚であり、彼の多様な音楽性を堪能できる作品です。数々のアクシデントを乗り越えて制作された、その背景も含めて、長く聴き継がれるべき名盤と言えるでしょう。 収録楽曲の多くは、その後発表されたベストアルバムにも収録されており、その人気と完成度の高さが伺えます。 このアルバムは、槇原敬之の音楽を深く理解するためにも、ぜひ聴いていただきたい1枚です。

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