あぐり

あぐり

『あぐり』は、1997年4月7日から10月4日まで放送されたNHKの連続テレビ小説で、作品番号は第56作にあたります。主演には田中美里が起用され、岡山県岡山市、東京都市ヶ谷、山梨県を舞台に物語が展開されました。

このドラマは、美容家として知られる吉行あぐりの実際のエッセイを基にしており、岡山県と山梨県が舞台となった初めての連続テレビ小説です。ヒロインであるあぐりが、周囲の人々との複雑な人間関係を通じて自身の夢を追い求めながら成長していく様子が描かれています。特にあぐりを取り巻く恋愛模様や様々な人間関係が描かれ、ヒロインの周囲に展開する恋や片想いといったドラマが、当時の社会背景とともに多面的に描写されました。

特に、野村萬斎演じるあぐりの夫・エイスケのキャラクターが高い人気を誇りました。しかし、彼の急死という衝撃的な展開は視聴者の大きな反響を呼び、NHKには視聴者から助命嘆願が寄せられるほどでした。物語の舞台であるあぐり美容室の外観は、実際のモデルに基づきつつ、多少のドラマ的な脚色が施されています。

『あぐり』では、前年度から導入された週タイトルの形式に加え、出演者によるナレーションが次週を予告する新たな試みも加わりました。1997年の平均視聴率は28.4%、最高視聴率は31.5%を記録し、視聴者の関心を集めました。また、2003年には総集編が、2004年には完全版のDVDが発売されるなど、今なおその人気を保持しています。

あらすじ

物語は、1907年7月10日、岡山県で生まれたあぐりを主人公として展開されます。彼女はお転婆な少女として育ちますが、姉たちと父を相次いで失い、経済的困窮に直面します。そんな中、岡山の有力な土木業者・望月家との縁談が持ち上がり、15歳で望月エイスケに嫁ぐこととなります。家庭に戻ったエイスケは、家業を顧みず作家としての夢に没頭しますが、あぐりとの間に次第に愛が芽生えます。

関東大震災が起こり、エイスケは消息不明となりますが、無事であることが判明し、長男・淳之介が誕生します。その後、エイスケが再び上京すると、あぐりは美を追求する道を選ぶこととなります。美容師としてのキャリアを志し、彼女は「カフェ・セ・ラ・ヴィ」で出会ったチェリー山岡に弟子入りします。

几帳面に美容師としての技術を磨く中で、彼女の美容室「あぐり美容院」は繁盛し、エイスケは作家として成功を収めますが、家庭との両立が困難を極めます。時代は戦争とともに厳しさを増し、あぐりは次々と試練に直面します。エイスケの死、戦争の影響、家族の散り散りになりながらも、彼女は再び立ち上がり、独立して美容院の経営に奔走します。

戦後、あぐりは全国チェーンの「ビューティーサロン光美堂」の副社長となり、多忙を極めますが、次第に自分自身の夢へと目覚めて行きます。最終的には自身の理想を実現するために、小さな美容院「あぐり美容院」を開店するに至ります。この物語は、多くの女性に向けた力強いメッセージを持ち、自立と母性、夢を追い続ける力強さを描いています。

こうした多彩なキャラクターや時代背景の中で、日本の女性が直面する困難と向き合う姿を描いた『あぐり』は、心をつかむドラマとして多くの支持を受けていくこととなりました。

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