おとぎ電車

おとぎ電車について

おとぎ電車（おとぎでんしゃ）は、1950年代に京都府の宇治川沿いで観光を目的に運行されていた遊覧鉄道です。この鉄道は、元々は発電所建設のための資材を運ぶ専用鉄道として敷設されていましたが、後に観光用に転用されました。直接的な鉄道事業としてではなく、遊戯施設として認可を受けた点が特徴的です。

歴史の背景

おとぎ電車が遊覧鉄道として運行開始されたのは、1950年10月11日ですが、その起源は1920年代に遡ります。当初、宇治川電気により大峯ダムの建設に伴って資材運搬用のトロッコが設置され、電気機関車が運行されていました。これが1930年代にまで続き、戦後に観光用途に転用される計画が立てられました。

観光船による宇治川の観光も始まっていましたが、そのアクセスの不足が問題となり、遊覧鉄道の利用が望まれていました。遊覧鉄道としての事業申請は複雑でコストもかかるため、児童福祉法に基づく遊戯施設としての認可を得ることにより、この課題を克服しました。その結果、必要な整備が行われ、晴れておとぎ電車が開業を迎えました。

運行開始とその後

おとぎ電車は京阪電気鉄道により運営され、凸型車体の電気機関車と7両の客車で構成された運行が行われました。主要駅は「天ヶ瀬駅」と「堰堤駅」、途中駅はなく、運賃は大人40円、小人20円と設定されました。観光客が少ない平日には地元住民の移動手段としても利用される等、地域に寄与していました。

開業から数年の間におとぎ電車の人気は高まり、特に行楽シーズンには賑わいました。ただし、交通手段が不足しており、京阪電気鉄道は新たにプロペラ船を導入してアクセス改善を図りましたが、自然災害により運行は困難となりました。台風や豪雨によっても大規模な損失を被り、運行が一時停止される事態へと至ります。

地元からの復旧要望を受けて、1954年には復旧工事が行われ、再び運行が再開されました。この時に導入されたタルゴ形客車「むかで号」は新たな魅力を加える要素となりました。しかし、1958年には盛況な運行が続きこちらも乗客数は増え続け、年間の利用客数は16万人を超えていました。

廃止の経緯

1960年には新しい多目的ダムが建設される計画が進み、おとぎ電車の線路はそのダムの水没により廃止に至りました。こうして、おとぎ電車は1960年5月31日をもって運行を終了し、10年の歴史にピリオドが打たれることとなりました。

廃止後の動き

その後、宇治川を起点にした新たな観光の形態が展開されましたが、利用される公共交通機関は減少しました。元々の役割を果たした宇治川ラインバスも最終的には1993年に運行を終了し、公共交通機関はタクシーを除いて姿を消してしまいました。今日では、宇治川の自然の魅力を楽しむための手段が限られた状態が続いています。

おとぎ電車の歴史は、観光と自然の共生の象徴でもあり、地域に根ざした遊覧鉄道の一つとして、今も人々の記憶に残っていることでしょう。

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