おふく

おふく（吹髷）

「おふく」とは、現在では主に京都の舞妓さんが結う独特の日本髪です。別名「吹髷（ふくわげ）」とも呼ばれ、そのふっくらとした優雅な形が特徴です。この髪型は、古くは少女たちの間で結われていたものが起源とされており、時代を経て変化しながら受け継がれてきました。

歴史と系統

おふくの歴史を遡ると、もともとは子供や若い女性の髪型として登場しました。江戸時代には、大奥に仕える若い見習いの女中たちがこの髪型を結っていた記録が残されています。その後、民間にも広まり、様々なアレンジが加えられる中で、現代の舞妓さんが結うような華やかな形へと発展しました。

系統としては、勝山髷の派生であり、「吹輪」という髪型から生まれたとされています。初期のおふくは、吹輪の輪の部分を小さく、比較的平たい形に結んだものだったようですが、現代のものはより立体的に、丸く整えられています。

京舞妓における位置づけ

京舞妓の髪型は、そのキャリアや年齢、そして披露する行事によって細かく変化します。おふくは、舞妓さんが一人前へと成長していく過程で非常に重要な意味を持つ髪型です。

舞妓になったばかりの年少のうちは、「割れしのぶ」という可愛らしい雰囲気の髪型を結います。しかし、舞妓として経験を積み、二年、三年と経つにつれて、幼さが抜け、大人びた魅力が加わってきます。この頃になると、可愛らしい割れしのぶが似合わなくなってくるため、より落ち着いた印象のおふくに髪型を変えます。この髪型を変える儀式は「髷替え（まげかえ）」と呼ばれ、舞妓の成長を示す大切な節目となります。

おふくを結う期間は、芸妓になる準備を始めるまでの間です。芸妓になるおよそ一、二ヶ月前になると、「奴島田（やっこしまだ）」という髪型に結い替え、さらに芸妓になる直前の約一週間前には、「先笄（さっこう）」という独特の髪型を結びます。

このように、おふくは舞妓さんが割れしのぶを卒業し、一人前へと近づいている段階で結われる、まさに成長期の髪型と言えるでしょう。

特徴的な構造と装飾

現代のおふくの結い方には、特徴的な構造と装飾が見られます。

髷の部分は、地毛だけでなくたっぷりと入れ毛（かもじ）を使うことで、ふっくらとした丸い形に整えられます。この丸みが、おふく特有の柔らかな雰囲気を生み出しています。初期の平たい形から、より豊かで立体的なシルエットへと変化しているのは、時代の好みが反映されていると言えるでしょう。

装飾に関しても、おふくには独特のルールがあります。特に目を引くのが、髷の下の部分に留められる赤い縮緬（ちりめん）です。この縮緬には銀箔が施されており、光を受けると上品に輝きます。この飾り方は、年少舞妓が結う割れしのぶが、髷の中に「ありまち鹿の子」と呼ばれる赤い絞りの縮緬を飾り、髷を上下に割って見せるのとは対照的です。

なお、京都の嶋原にいる太夫が結う髪型の中にも、見た目は大きく異なりますが、構造的にはおふくと共通する部分があると言われています。

おふくは、単なる髪型ではなく、京舞妓の美意識、そして成長の物語を映し出す、文化的にも重要な意味を持つ髪型なのです。

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