か「」く「」し「」ご「」と「

住野よる『か「」く「」し「」ご「」と「』解説

住野よるによる連作短編集『か「」く「」し「」ご「」と「』は、普通の高校生でありながら、他人にはない特別な力を持つ5人の物語。

各章は、京、ミッキー、パラ、ヅカ、エルという個性的なキャラクターそれぞれの視点から語られ、彼女らが抱える悩みや葛藤、そして成長が、繊細なタッチで描かれています。

あらすじ

第1章：京目線

人の気持ちが「！」や「？」などの記号で見える京は、控えめな性格。クラスメイトのエルとの間に距離を感じ悩む。不用意な一言でエルを傷つけてしまい、登校拒否にさせてしまう。自分の能力がもたらす誤解に苦悩しながらも、ミッキーの助けにより、エルとの関係を修復し、少しずつ自信を取り戻していく。

第2章：ミッキー目線

明るくリーダーシップのあるミッキーは、人の感情がプラスかマイナスかのバーとして見える。文化祭のヒーローショーで、持ち前の明るさで場を盛り上げるも、セリフを忘れてしまうアクシデントが発生。パラのサポートにより、無事成功を収める。

第3章：パラ目線

人の心拍数がわかるパラは、常に冷静なヅカを冷たい人間だと感じ、ミッキーに近づけないように画策する。修学旅行中、自身の行動が空回りし倒れてしまう。ヅカとの会話を通して、自身の行動原理を自覚し、素直な自分を受け入れ始める。

第4章：ヅカ目線

人の感情が記号で見えるヅカは、エルが抱える悩みに気づきながらも、どうすることもできない。エルが京を避けている理由を知り、自身の気持ちと向き合う。エルの抱える孤独感に共鳴し、告白することで彼女を安心させ、関係を深めていく。

第5章：エル目線

人の恋心が矢印で見えるエルは、ミッキーと京がお互いを意識していることに気づく。2人のすれ違いを解消し、結びつける役割を果たす。自身の能力の意味を再認識し、他者との関わりの中で自分の役割を見出していく。

登場人物

京（大塚京）：人の気持ちが記号で見える。内気で自己肯定感が低い。
ミッキー（三木直子）：人の感情がバーで見える。明るく活発で、周囲を引っ張る。
パラ（黒田）：人の心拍数がわかる。予測不能な行動をとるが、実は繊細で思慮深い。
ヅカ（高崎博文）：人の感情が記号で見える。優しく穏やかで、周囲から信頼されている。
* エル（宮里望愛）：人の恋心が矢印で見える。内向的だが、芯が強く、独特の感性を持つ。

本作の魅力

『か「」く「」し「」ご「」と「』の魅力は、何と言っても、登場人物たちの心情が丁寧に描かれている点です。特殊な能力を持つ彼らですが、悩みや葛藤は私たちと変わらない。だからこそ、彼女らの言葉や行動に共感し、感情移入してしまうのです。

また、各章で視点が変わることで、物語に奥行きが生まれています。同じ出来事でも、人によって捉え方が違う。その違いが、人間関係の複雑さや面白さを際立たせています。

読後感は爽やかで、前向きな気持ちになれるでしょう。ぜひ手に取って、彼女たちの青春を共有してみてください。

映画情報

2025年5月30日には、奥平大兼と出口夏希を主演に迎えた映画版が公開予定です。原作の持つ魅力をどのように映像化するのか、期待が高まります。映画を通して、より多くの人がこの物語に触れることを願っています。

もう一度検索