きよ彦

きよ彦（本名：大堀 清日古）は、1950年3月25日に福島県耶麻郡西会津町で生を受け、2019年10月28日に69歳でその生涯を閉じました。着物デザイナー、タレント、料理人、料理研究家と、多岐にわたる顔を持つ人物でした。

彼の生い立ちは、旅館の板前だった父と農家出身の母という背景に始まります。小学5年生の時に両親の離婚を経験し、母と妹と共に暮らしました。地元の福島県立西会津高等学校を卒業後、上京。サラリーマンを経て、六本木でバーのオーナーを務めるなど、様々な職を経験しました。

転機が訪れたのは1988年。京都の呉服問屋の勧めにより、着物デザインの世界に入ります。特に花をモチーフにしたその斬新なデザインは、多くの注目を集めました。

1990年代初頭からは、テレビの世界へと活動の場を広げます。自らがデザインした着物を纏い、独特のおネエ言葉と歯に衣着せぬ物言いをするキャラクターとして、コメンテーターやタレントとして人気を博しました。時に「元祖おネエキャラ」や「おネエタレントの古株」とも称されましたが、彼は一人の娘を持つ既婚者であり、妻子がいました。

私生活では、大きな悲しみを経験しました。娘の高校卒業式の日に、妻をわずか42歳で動脈瘤により亡くしています。妻を失うまでは、料理に触れる機会もほとんどなかったと言います。しかし、保育士を目指して短大に進学した娘のために、毎朝欠かさず2年間弁当を作り続けたことが、彼を料理の世界へと導くきっかけとなりました。

料理研究家としての活動と並行して、飲食店のプロデュースや経営も行いました。故郷の福島県会津若松市では、手打ちそば屋「きよ彦 花」をプロデュース。店で使用する器の全てを自らデザインし、店内には着物も展示していました。特に、地元の食材を活かした天ぷらは評判を呼び、ガイドブックにも掲載されるほどでした。多くのリピーターや文化人も足繁く通いましたが、残念ながらこの店は2010年に閉店しています。また、生前は六本木でおでん店「まめ彦」のオーナーも務めていました。

著書としては、『びっくり極うま!野菜料理』、『いきな女にいきな躾―とっておき、28の秘訣』、『五色二十種の野菜を使ったきよ彦流料理』などがあり、料理や生き方に関する著作を発表しています。

テレビ出演も多く、NHKの『ゆうどきネットワーク』や『趣味悠々』、日本テレビ系の『クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!』、TBS系の『ジャスト』、フジテレビ系の『笑っていいとも!』など、情報番組からバラエティ番組まで幅広く登場しました。

晩年は病との闘いがありました。2017年末にステージ4の下咽頭がんを発症し、入院・手術を経て一旦は回復。2018年には再びテレビ番組に出演するなど、活動を再開していました。しかし、2019年の夏に頸動脈からの出血により再び入院。手術を受けましたが、容態は回復せず、同年10月28日未明、入院先の東京都内の病院で息を引き取りました。69歳でした。正式な死因は公表されていませんが、報道では脳梗塞の疑いが伝えられています。同年11月3日には、近親者のみによる密葬が執り行われました。

着物デザインからテレビ、料理、そして店舗経営と、きよ彦はその多様な才能を活かし、多くの人々に親しまれました。特に、妻子を持つ身でありながらおネエタレントとして独自の地位を確立し、妻の死を乗り越えて料理人となったエピソードは、彼の人間的な魅力として語り継がれています。

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