くじらとり

『くじらとり』

『くじらとり』は、宮崎駿が三鷹の森ジブリ美術館のために制作した短編アニメーションで、2001年に公開されました。映画の上映時間は約16分で、鮮やかなカラーで表現されています。この作品は、中川李枝子の童話『いやいやえん』（1962年、福音館書店）の第二話を元にしています。

あらすじ

物語は、ちゅーりっぷ保育園のほしぐみの男の子たちが、自ら積み木で作った船「ぞうとらいおんまる」に乗ってくじらを捕まえる夢の冒険に出かけるところから始まります。彼らは空想の大海原に出航し、船を漕ぎながら様々なアクシデントに直面します。浸水や嵐といった試練を乗り越え、勇気を振り絞った男の子たちはついにくじらを捕まえることに成功します。

ほしぐみの園児たちは、捕まえたくじらに対して花輪を贈り、みんなで一緒に記念写真を撮る素敵なシーンも描かれます。最後には、見守る子どもたちの姿の中で、捕まえたくじらが大海原へ帰っていく姿が印象的です。

スタッフとキャスト

この短編の製作は徳間康快が手掛け、監督・脚本には宮崎駿が名を連ねています。演出アニメーターとして稲村武志が関わり、美術は平原さやかが担当しました。音楽は野見祐二が作曲し、実際のアニメーションには湯浅政明や橋本晋治などのアニメーターが参加しています。

声のキャストには石原圭人（しげる）、小野寺真央（チコ）、伊藤裕樹（キャプテン）など、個性豊かな声優陣が揃いました。特にくじらの声を担当した野中晋輔の演技が印象的です。

音楽とテーマ

『くじらとり』には、子どもたちによる主題歌とエンディングテーマがあります。挿入歌「ぞうとらいおんまる」は中村李枝子が作詞し、野見祐二が作曲・編曲をしています。さらに、エンディングテーマ「おかえりのうた」も特別に作られ、作品の印象をさらに深めています。

上映情報

この短編は、三鷹の森ジブリ美術館の映像展示室「土星座」で常時上映されているほか、ジブリパークの「映像展示室オリヲン座」でも上映が行われています。また、聴覚障害者への配慮から字幕版も提供されており、1時間おきに上映される工夫がされています。字幕版では音の演出が全体的にマイルドに調整されている点も特徴です。

原作への想い

宮崎駿は原作の大ファンであり、映像化にあたっては忠実にその雰囲気を再現しています。彼は学生時代に初めて原作を読んだ際から、アニメーション作品にしたいと考えていたと言います。この情熱が映像に込められており、多くの人々に感動を与えています。

受賞歴

本作は、第56回毎日映画コンクールでも大藤信郎賞を受賞しました。この受賞は、作品のクオリティを証明するものでもあり、多くのファンに愛され続ける理由の一つです。

補足

宮崎駿は別の原作の絵本「そらいろのたね」をも1992年のTVスポットアニメーションとして監督しており、彼の原作への思い入れは非常に強いものがあります。

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