大藤信郎賞

大藤信郎賞について

大藤信郎賞は、日本のアニメーション界のパイオニアである大藤信郎氏の功績を記念し、1962年に毎日映画コンクールによって設立されました。この賞は、日本のアニメーション映画賞の中でも最も長い歴史を持ち、その選考は、アニメーションの制作分野で特に優れた成果を上げた個人またはグループに対して贈られます。大藤信郎氏の遺産を基に設立されたこの賞は、実験的な作品や、独創的な表現を追求した作品を評価対象としており、アニメーションの芸術性を高めることを目的としています。

大藤賞の選考は、毎日映画コンクール内で、アニメーション映画賞が先に決定した後に行われ、両賞はノミネートを共有しますが、その対象とする作品の性質には違いがあります。アニメーション映画賞が主に長編作品を対象とするのに対し、大藤賞は実験的な短編作品や、革新的な表現を追求した作品に焦点を当てています。この棲み分けにより、アニメーションの多様な可能性を評価し、その発展を促進する役割を担っています。

受賞者の中には、手塚治虫氏、宮崎駿氏、高畑勲氏など、日本のアニメーションを代表する巨匠たちの名前が連なります。また、岡本忠成氏や川本喜八郎氏など、実験的な作品で知られる作家も多く受賞しており、この賞がアニメーションの新たな地平を切り開く役割を果たしてきたことがわかります。

受賞作品は、短編アニメーション作品集としてもまとめられており、アニメーションファンにとって貴重な資料となっています。大藤信郎賞は、アニメーションの歴史を彩る名作や、次世代のアニメーションを担う才能を世に送り出す、重要な役割を担い続けています。

主な受賞者と作品

1962年: 手塚治虫「ある街角の物語」
1963年: 芹川有吾ら東映動画スタッフ「わんぱく王子の大蛇退治」
1964年: 和田誠「殺人 MURDER」
1965年: 久里洋二、村治夫と岡本忠成ら電通映画制作グループ「ふしぎなくすり」
1966年: 手塚治虫「展覧会の絵」
1967年: 久里洋二「二匹のサンマ」「部屋」
1968年: 学習研究社「みにくいあひるのこ」
1969年: 虫プロダクション「やさしいライオン」
1970年: 岡本忠成とその制作グループ「花ともぐら」「ホーム・マイホーム」、日本動画株式会社 (大藤賞委員会特別賞)
1971年: ビデオ東京「てんまのとらやん」
1972年: 川本喜八郎「鬼」
1973年: エコー「南無一病息災」
1974年: 川本喜八郎「詩人の生涯」
1975年: 岡本忠成「水のたね」
1976年: 川本喜八郎「道成寺」
1977年: 岡本忠成「虹に向かって」
1979年: 東京ムービー新社「ルパン三世 カリオストロの城|ルパン三世_カリオストロの城」
1980年: 古川タク「スピード」
1981年: OH!プロダクション「セロ弾きのゴーシュ」
1982年: 岡本忠成、桜映画社とエコー「おこんじょうるり」
1983年: ゲンプロダクション「はだしのゲン」
1984年: 徳間書店と博報堂「風の谷のナウシカ」
1985年: 朝日新聞社、テレビ朝日、日本ヘラルド映画グループ「銀河鉄道の夜」
1986年: 宮崎駿と制作スタッフ、徳間書店「天空の城ラピュタ」
1987年: 手塚プロダクション「森の伝説」
1988年: 宮崎駿「となりのトトロ」におけるアニメーション作家としてのオリジナリティに対して
1990年: 川本喜八郎「いばら姫、またはねむり姫」
1991年: 岡本忠成（川本喜八郎が引継ぎ完成）「注文の多い料理店」
1993年: たむらしげる「銀河の魚」
1995年: 大友克洋「MEMORIES」における総指揮に対して
1996年: N&Gプロダクション「るすばん」
1998年: 白組「水の精・河童百図」
1999年: アレクサンドル・ペトロフと技術スタッフ「老人と海」
2000年: 「BLOOD THE LAST VAMPIRE」
2001年: スタジオジブリ「くじらとり」
2002年: 今敏「千年女優」
2003年: 川本喜八郎の企画及び総合演出「冬の日」
2004年: 「マインド・ゲーム」
2005年: 岸本真太郎「tough guy!2005」
2006年: 「鉄コン筋クリート」
2007年: 山村浩二「カフカ 田舎医者」
2008年: 宮崎駿「崖の上のポニョ」における独創的表現に対して
2009年: 中田秀人監督作品「電信柱エレミの恋」、立体アニメ表現の完成度に対して
2011年: 平林勇「663114」
2012年: 「火要鎮」
2013年: 「海に落ちた月の話」
2014年: 「澱みの騒ぎ」
2015年: 「水準原点」
2016年: 「この世界の片隅に」
2017年: 「夜明け告げるルーのうた」
2018年: 「リズと青い鳥」
2019年: 「ある日本の絵描き少年」
2020年: 「音楽」
2021年: 「プックラポッタと森の時間」
2022年: 「犬王」
2023年: 「君たちはどう生きるか」

外部リンク

* 毎日映画コンクール 歴史(過去の受賞作)

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