コノハズク

コノハズク（木葉木菟、木葉梟）

コノハズク（学名：Otus sunia）は、鳥類フクロウ目フクロウ科に属する鳥類です。和名には木葉木菟、木葉梟といった表記が用いられます。体長はおよそ20センチメートルと、日本に生息するフクロウの仲間では最も小さい種類です。

形態

頭部には、小さな羽毛の束が外耳のように見える「羽角（うかく）」があります。目の虹彩は鮮やかな黄色をしています。

分布

この鳥はアジアの広い範囲に分布しており、インド沿岸部からヒマラヤ山脈、東南アジア、中国東部、朝鮮半島、そして日本の南樺太から日本列島にかけて生息しています。日本国内では、夏鳥として渡来します。九州北部から北海道にかけての地域で繁殖期を過ごしますが、奄美大島より南の南西諸島に留鳥として生息するリュウキュウコノハズク（学名：Otus elegans）は、本種とは別種とされています。

国際的には、本種はIOC World Bird List（Version 13.1）によると、Otus sunia sunia を含む9つの亜種に分類されています。

生態

コノハズクは主に山地の森林に生息し、夜行性です。昼間は木の枝などでじっと止まって休息しています。営巣場所としては、樹洞やキツツキの古巣などを利用します。日本では5月頃に渡来し始め、6月頃から抱卵期に入ります。一度に産む卵は4個から5個で、およそ24日間抱卵します。雛鳥は孵化後、約3週間で巣立ちます。食性は動物食で、主に昆虫類を捕食しています。

鳴き声と「ブッポウソウ」の謎

コノハズクの最も特徴的な点は、その独特の鳴き声にあります。日本語では「ウッ・コッ・コー」あるいは「ブッ・ポウ・ソウ（仏法僧）」と聞きなされる声を発するため、「声の仏法僧」という別名でも呼ばれています。長年にわたり、この神秘的な「ブッ・ポウ・ソウ」と聞こえる鳴き声は、全く別の鳥であるブッポウソウ（学名：Eurystomus orientalis）によるものだと信じられてきました。実際、ブッポウソウという鳥の名前自体が、この誤解から名付けられたものです。しかし、実際のブッポウソウは「ゲッゲッゲッ」という濁った声で鳴きます。

コノハズクは深い山の夜に鳴き、しかも夏鳥であるため、日本では主に5月から6月という限られた期間にしかその声を聞くことができませんでした。そのため、「ブッ・ポウ・ソウ」の鳴き声の主がどの鳥なのかは、長年明らかにならず、謎とされていました。ただし、コノハズクが鳴き声の主である可能性は、古くから全く示唆されていなかったわけではありません。平安時代から江戸時代初期にかけて描かれたとされる「仏法僧」の絵の中には、明らかにコノハズクが描かれているものが複数存在しているからです。

この長年の謎が近代になって解明されたのは、ラジオ放送がきっかけでした。1935年（昭和10年）6月7日、当時の日本放送協会名古屋中央放送局（現在のNHK名古屋放送局）は、愛知県南設楽郡鳳来寺村（現在の新城市）にある鳳来寺山から、ブッポウソウの鳴き声の実況中継を全国に向けて放送しました。夜9時55分から30分間の放送では鳥がよく鳴いたそうですが、ゲストの話が長かったり、鳴き声を遮ったりしたためか、リスナーからの非難の電話が多数寄せられたといいます。この反響を受けて、翌6月8日の放送ではゲストを呼ばずに、鳥の鳴き声のみを主体とした構成としました。この夜も鳥はよく鳴き、放送終了後には前日とは打って変わって絶賛の電話が殺到したそうです。

このラジオ放送を聴いていたリスナーの中から、「うちで飼っている鳥と同じ鳴き声だ」と申し出る人が現れました。そのリスナーが飼っていた鳥を確認したところ、それがコノハズクであったことが判明したのです。このコノハズクは、東京・浅草の傘店で飼育されていた個体だったといいます。生放送中、ラジオから流れてきた鳳来寺山のコノハズクの鳴き声に誘われるかのように、そのコノハズクも同じように「ブッ・ポウ・ソウ」と鳴き出したとのことです。これにより、長年の謎であった「ブッ・ポウ・ソウ」の正体がコノハズクであったことが、ようやく広く認知されることとなりました。この一連の出来事は、作家の戸川幸夫によって作品『仏法僧』としても描かれています。

保全状態

国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストでは、現在のところ軽度懸念（Least Concern）と評価されています（Ver. 3.1, 2001）。また、ワシントン条約の付属書II類に記載されています。日本では、1965年から愛知県の県鳥に指定されています。

この鳥は、その小さな体と特徴的な鳴き声、そして歴史的な謎解きのエピソードによって、多くの人々に親しまれています。

もう一度検索