さいたまんぞう

さいたまんぞう（本名：牛房公夫）は、1948年 12月9日に岡山県久米郡柵原町（現在の美咲町）で生まれ、現在は東京都中野区を拠点に活動する、歌手、タレント、そして野球審判という多彩な顔を持つ人物です。サブマリン事務所に所属し、そのユニークなキャリアを築いています。

経歴

さいたは6人きょうだいの末っ子として育ちました。少年時代から野球に打ち込み、高校進学時には地元岡山県の関西高校野球部のセレクションで最終候補に残るほどの実力でしたが、「野球では生活できない」という家族の説得と下宿生活への抵抗から、野球部のない高校へ進学することを決意しました。この頃、西郷輝彦の自伝に触発され、音楽の世界を目指すようになります。高校卒業後の1967年に上京し、アマチュアバンドでドラムを担当。その後、渡辺プロダクションに所属し、アウト・キャストのボーヤや浜畑賢吉の付き人を経験。コーラス漫談グループ「スリートーンズ」に加入しますが、1979年にグループは解散。同年から野球審判としての活動も開始しました。

「なぜか埼玉」でのブレイク

転機が訪れたのは1980年末。自主制作したコミックソング「なぜか埼玉」が、翌1981年2月にニッポン放送の深夜ラジオ番組『タモリのオールナイトニッポン』で紹介されたことです。埼玉県という特定の地域に焦点を当てた珍しいご当地ソングは、その意外性から全国的な話題を呼びました。この反響を受け、同年4月にはフォーライフ・レコードから商業盤として再リリースされ、自主制作盤と合わせて12万枚のヒットを記録しました。しかし、楽曲のヒットにもかかわらず、地方営業の依頼は皆無で、タレントとしての仕事は増えなかったといいます。当初は「覆面歌手」や「芸能界のツチノコ」とも呼ばれ、その正体や姿を見た者がいないと噂されました。その後、メディアへの露出が増える時期もありましたが、長くは続かなかったようです。さらに、楽曲の歌唱印税は所属レーベルの社長によって勝手に売却され、さいた自身に支払われたのは月10万円の給料のみだったという苦い経験も語られています。この曲のリリース以降、「さいたまんぞう」という芸名（当初は「斎田萬蔵」と漢字表記でしたが、サインの書きやすさから平仮名に変更）での活動を本格化させました。

「歌う駅員さん」としての人気確立

「なぜか埼玉」で一躍脚光を浴びた後も、さいたは独自の道を歩みます。続編となる楽曲や、川島恵とのデュエット曲「東京カントリーナイト」などを発表。特に「東京カントリーナイト」は、TBSの情報番組『そこが知りたい』のある企画をきっかけに、さいたのタレントとしての活動の幅を大きく広げることになります。番組スタッフの目に留まったこの楽曲がエンディングテーマに採用されただけでなく、駅員の扮装で首からラジカセを下げ、通勤路線をテーマにした替え歌を披露するという企画が生まれました。この「歌う駅員さん」としてのパフォーマンスは大きな好評を博し、足掛け10年近くにわたり不定期ながら番組に出演。1997年には「ああ東京カントリーナイト」としてCD化もされ、彼のユニークなキャラクターを決定づけるきっかけとなりました。

多彩な活動

歌手としては、「歌う駅員さん」関連楽曲のほかにも、故郷への想いを歌った「はくつる号は故郷へ」や、これまでの楽曲を集めたアルバム「生存証明」（2003年）を発表しています。また、2011年には東日本大震災後の原子力発電所事故を受けて、原発廃止を訴える社会派ソング「原発・アウト！」を17年ぶりにリリース。この曲を携え、国会前で歌うなどの活動も行いました。その後も「安保法案・アウト！」といった社会的なテーマを扱った楽曲を発表したり、他のアーティストとのユニット「まんにゃんろう」として活動したりと、精力的に音楽活動を続けています。

タレントとしては、『風雲!たけし城』や『そこが知りたい』などのバラエティ番組や情報番組に多数出演。近年はボーイズバラエティ協会に入会し、浅草東洋館や新宿末廣亭といった寄席の舞台にも立つようになりました。寄席では野球審判の衣装で登場し、時事問題を「アウト」「セーフ」と判定する独自の漫談スタイルを確立しています。また、映画では『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』で審判役を演じたほか、インターネット配信のトーク番組「まんCHANねる」を継続するなど、様々なメディアで活動しています。

ビートたけしや明石家さんまといった著名なタレントの番組で名前が挙がったり、ラジオ番組の街頭インタビューに偶然登場したりと、自らが名乗る「芸能界のツチノコ」の異名の通り、予測不能な形で世間にその存在を示すことがあります。現在もClubhouseでの活動など、新しい分野にも挑戦し続ける、まさに唯一無二のエンターテイナーです。

彼のキャリアは、大ヒット曲に恵まれつつもその後の苦労を経験し、しかしそこで立ち止まることなく、自らのユニークなキャラクターと多才な能力を活かして活動の場を広げてきた道のりと言えるでしょう。歌手、タレント、野球審判、そして寄席芸人として、さいたまんぞうは今もなお、マイペースながらも着実に、大衆に親しまれる存在であり続けています。

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