スル

スルは、フィジー諸島を中心とするメラネシア地域で広く着用されている伝統的な腰巻状の民族衣装です。インドネシアのサロンと外見が似ていますが、スルは一枚の布を筒状に縫い合わせることなく、そのまま腰に巻いて着用します。この点がサロンとの大きな違いであり、男女問わず着用できるのも特徴です。

スルの一般的なサイズは、丈が約60センチメートル、長さが約1.3メートルです。素材にはプリントが施された綿布が用いられることが多いですが、伝統的にはタパ布が使用されていました。着用すると、特に女性の場合、膝下丈のタイトスカートのような印象になります。

スルの裾のデザインには主に二つの種類があります。一つは裾が直線になっているタイプ、もう一つは鋸の歯のようなジグザグの山型になっているタイプです。腰の締め方にもバリエーションがあり、ベルトで締めるタイプと、日本の腰巻のように上部に縫い付けられた腰紐で締めるタイプが存在します。

通常、スルを着用する際には上半身は裸のままですが、現代では様々なスタイルに合わせて着用されています。例えば、軍人は白いジグザグ裾のスルに欧風の軍服を合わせ、警察官は白地に黒い横線が入ったストレート裾のスルに白い半袖の制服を着用します。ホテルの従業員は紺無地の脇に青いラインが入ったジグザグ裾のスルに丸首シャツを合わせ、会社員はストレート裾の紺などのスルに白い開襟半袖シャツなどを着用します。

このように、スルは伝統的な民族衣装でありながら、現代の様々な職業や場面に合わせて多様な着こなしがされています。その多様性と適応性こそが、スルがメラネシア地域で長く愛され続けている理由の一つと言えるでしょう。

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