ぶん公

ぶん公

ぶん公（ぶんこう）は、1914年頃から1938年まで生きたオスの雑種犬です。この犬は仔犬の頃に火事の焼け跡で鳴いているところを救われ、小樽の消防組で育てられました。彼は消防隊員たちに愛され、消防車に乗って共に出動し、現場では様々な役割を果たしました。

生涯の始まり

小樽は歴史ある港町で、明治時代には石炭の集積地として発展しました。しかし、急増する人口に対して住宅の供給が追いつかず、木造家屋の増加とともに度重なる大火に見舞われる町でもありました。ぶん公が生まれた1914年は、消防整備が進められていた時期でもありました。

消防隊員たちは、出動時に火事の現場でひときわ目立つ存在である1匹の仔犬を救い上げ、彼を育てることに決めました。この仔犬は白い体に茶色のブチを持ち、すぐに「ぶん公」と名付けられました。特に消防組第5部長の神山に懐いていたぶん公は、隊員たちの弁当を分けてもらいつつ成長しました。

また、ぶん公は、消防車に乗車することを喜び、出動時には自らシボレー製消防車のステップに飛び乗る姿が多くの人に愛されました。彼は火事の現場で、ホースのもつれを直したり、現場を整理したりとさまざまな役割を果たしました。特に、ぶん公は出動の際の吠え声で火事を知らせるなど、高い知能を発揮しました。

活躍と長寿

ぶん公は生涯で1000回以上も出動したと言われ、火災報知器の音を聞き分け、すぐに行動に移る彼の姿に感動した人々も多かったです。しかし、年を重ねるごとに彼の体力は衰え、もちろん向かうべき現場が減る中でも、彼は最後の瞬間まで消防士としての役割を担おうとしました。

1938年2月3日、ぶん公は24歳という長寿でその生涯を終えました。その死は、小樽の新聞でも大きく報じられ、多くの人々に惜しまれました。彼の葬儀は盛大に執り行われ、参列者たちの涙が溢れました。治療のため自分一人で動物病院に向かったエピソードや、手元にあった好物のキャラメルが多くの供え物として届けられたことも語り継がれています。

家族と記念碑

ぶん公の記憶は剥製として残され、彼の功績を称えるために2006年には記念碑も建立されました。この記念碑は小樽市観光物産プラザ前に設置され、日々多くの人々が訪れます。ぶん公の愛らしい姿の銅像は、訪れる人々に親しまれ、時折花やキャラメルが供えられています。

ぶん公を題材にした絵本や童話も数多く存在し、彼の物語は次世代にも継承されています。特に井尻正二や水口忠による作品には、ぶん公の勇敢な日々や愛情深い性格が描かれています。

ぶん公の記憶は世代を超えて愛され続け、消防犬としての偉業は多くの人の心に刻まれています。今も小樽は、彼の存在を誇りに思い、ぶん公の足跡をたどりながら地域の防火意識を高めています。

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