フェド

FED（フェド）とは

FED（フェド、原語発音はフェト）は、かつてソビエト連邦に存在したレンジファインダーカメラのブランドです。FED工場（フェリックス・ジェルジンスキー記念工場）で製造され、その名前は工場の創設者であるフェリックス・ジェルジンスキーに由来します。このブランドは、児童福祉基金の捻出を目的としてカメラの製造を開始したことが始まりとされています。

FEDのカメラの特徴

FEDのカメラは、主に135フィルムを使用するレンズ交換式のレンジファインダーカメラで、24×36mm判（ライカ判）を採用しています。初期の製品はライカのコピーとして製造され、ライカLマウントを採用しています。しかし、第二次世界大戦以前の製品は、フランジバックが統一される前のライカをコピーしたため、Lマウントとは異なるフランジバックを持つ「FEDマウント」と呼ばれる独自のマウントになっています。

シャッター

全機種に回転式シャッターダイヤルが採用されています。

主なカメラボディ

FED (Original FED)
ライカI(A)のコピー機種で、初期の製品を区別するために「Original FED」と呼ばれます。1932年から1933年にかけて約30台が製造されました。エルンスト・ライツ純正距離計のコピーが付属し、レンズはエルマー型の50mmF3.5 ВООМПが採用されました。
FED-1
ライカIIのコピー機種で、外観から内部構造まで忠実にコピーされています。ただし、距離計カムやシャッター機構は簡略化されており、セルフタイマーやフラッシュシンクロ機構は備わっていません。第二次世界大戦を挟んで長期にわたり製造されたため、戦前型と戦後型でレンズマウントのフランジバックが異なります。シャッター速度は戦前型が1/25-1/500秒、戦後型が1/30-1/500秒です。
FED-S
FEDに1/1000秒の高速シャッターを追加した機種です。第二次世界大戦前や戦時中に少数のみ製造されました。
FED-V
FEDに低速シャッターを搭載した機種です。こちらも第二次世界大戦前や戦時中に少数のみ製造されました。
FED-Siberia
フィルム巻き戻しやシャッタースピードのノブを大きくし、レリーズボタンのカバーを高くした機種です。分厚い手袋を着用した状態でも操作しやすいように工夫されています。1940年頃に製造されました。同名のフェイクFEDも存在します。
FED-2
戦後型FEDの外観を一新した機種です。視度補正機構付きの一眼式ファインダー、フラッシュシンクロが搭載され、フィルム交換時には底板とともに裏蓋が外れるようになりました。距離計の基線長が長くなりましたが、後期生産分ではFED-3のファインダーブロックを流用したため短くなっています。シャッター速度は1/25-1/500秒または1/30-1/500秒です。
FED-3
FED-2に低速シャッターを追加した機種です。生産の簡略化のために外観が何度も変更され、基線長もFED-2より短くなっています。シャッター速度は1-1/500秒です。
FED-4
FED-3に外光式セレン露出計と低速シャッターを搭載し、フィルム巻き上げがノブ式からレバー式へと変更されました。
FED-5
現行モデルで巻き戻しクランクとホットシューを搭載。外光式セレン露出計を搭載したa型、露出計を省略したb型、ファインダーを大きくしブライトフレームを付けたc型があります。
ザリヤ（Zarya）
ソ連国内向けの普及型モデルです。FED-2をベースに作られ、距離計を省略した目測専用機です。

FEDマウントレンズ

戦前型のFED専用レンズは、FED工場でのみ製造され、レンズコーティングは施されていません。

FED 28mm F4.5
FED 50mm F3.5
エルマーのコピーである沈胴式鏡筒の標準レンズですが、レンズの構造はテッサーのコピーであり、絞りの位置もテッサーと同じです。
FED 50mm F3.5 マクロ
FED 50mm F2
FED-Sのために用意された大口径標準レンズで、少数のみ製造されました。
FED 100mm F6.3
小型の望遠レンズで、こちらも少数のみ製造されました。

Lマウントレンズ

ライカマウントレンズの一覧を参照してください。

コンパクトカメラ

FED10
距離計連動式レンズシャッターカメラで、マニュアル露出と非連動セレン露出計を搭載。レンズはインダスター61で、シャッター速度はB、1-1/250秒です。
FEDアトラス（FED Atras）
FED10をベースにした、ビハインドシャッター方式のレンズ交換式レンズシャッターカメラですが、交換レンズは発売されませんでした。距離計連動式でマニュアル露出、非連動セレン露出計を装備。レンズはインダスター61 52mm F2.8で、シャッター速度はB、1-1/250秒です。
FED50
プログラムEE専用の目測式コンパクトカメラで、レンズはインダスター81 38mm F2.8、露出計はリングセレン方式です。
FEDミクロン（FED Mikron）
プログラムEE専用の135フィルム24×18mm判コンパクトカメラです。リングセレンによる露出計を装備。レンズはゲリオス89 30mm F1.9で、コニカアイのコピーと言われています。マイナーチェンジによってより角ばったデザインになりました。FEDのハーフサイズカメラはこのミクロンのみです。
FEDミクロン2（Mikron2）
コニカC35のデッドコピーと言われています。事実上FED50の後継機種で、露出計はCdSトップアイ方式、レンズはインダスター81 38mm F2.8です。

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